コラム
うつわの好み2015.12.3(投稿日)

実家から独立してもう×年、ふと気が付くと結構な数の器を持っていました。

一人暮らしを始めるにあたって母から持たされたものもいくつかありますが、

その後、コレクションという気もなく、なんとなく買い集めていました。

金沢という土地柄、実家での普段使いの食器はお手頃な価格の九谷焼きなどが多かったと思います。多くの人が思い浮かべる九谷のイメージのものです。

 

最初に就職した九段下の会社のすぐそばに素敵なうつわ屋さんがあり、たまに寄っては、普段使い用やプレゼント用に購入していました。そこで出合ったのが70年代に開かれた比較的新しい「九谷青窯」という窯のうつわです。いまでは購入できるお店やオンラインショップも増えましたから、ご存知の方も多いかもしれません。「九谷」と名がついているにも関わらず、これまで自分が接してきた九谷焼きとは似ても似つかなかったため、とても新鮮。好みのものも多かったため機会があるたびに購入してきました。

九谷焼きには九谷五彩という色や柄の伝統があります。九谷青窯の試み、当時は「こんなん、九谷焼って呼べんわ~(金沢弁)」なんて言われたのでしょうか。実際、パッと見には九谷焼には思えないのですが、日常使いする側としては、そんなこと、あまり大切ではないのですよね。好きなのが一番。

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母からもらった伝統的な九谷の6寸鉢。懐かしさがあってこれはこれで好き。

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愛用20年以上? 九谷青窯の8寸六角皿。

毎年GWには、九谷焼の中心である石川県能美(のみ)市で「うつわ祭り」が開催されます。小さな頃はイヤイヤ両親に付き合っていましたが、最近は、この時期に狙って帰省することも。特に、市場に出回らなかったB品の山から掘り出し物を見つけた時は、嬉しさもひとしおなのです。

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数年前のうつわ祭りで見つけたトリコロール湯のみ。一番のお気に入りでカケがあっても諦められない。

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今年のうつわ祭りで購入したうなぎの皿。

焼き物にかぎらず、音楽でも芸能でも当初は異端扱いされてもめげずに新しい価値を世の中に認めさせて、今では1つの流れとなっているものは多々ありますね。自分の作品や仕事に対して、頑として意思を貫いたり、時には妥協したり、紆余曲折があったであろうことは想像に難くありません。仕事への誇りや意思の強さは大切な要素ですが、世の中に自分の居場所を作ったそのしなやかで強かな忍耐力に感銘を受けます。

S.K.

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