コラム
「週刊粧業新聞」8月26日号掲載2019.8.26(投稿日)
第49回「お客様不在の商品開発になっていませんか?」

「週刊粧業新聞」 8月26日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第49回 お客様不在の商品開発になっていませんか?』が掲載されました!

 

本文は、下記の通り。 

 

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『激変するコスメマーケット』

第49回 お客様不在の商品開発になっていませんか?

 

ここ数年「〇〇成分を高配合」や「△△技術採用」といった成分や技術ばかりをアピールした化粧品の広告が目について仕方ない。特に通販化粧品はそれが多いような気がする。技術研究の成果を熱心に語られても、理系でない私には、どんなお客様に向けてどんな幸せを提供してくれる化粧品なのかが一向に伝わってこない。まるで技術と成分しか語ることがない化粧品のようだ。これでちゃんとしたファンが育つのだろうか、と心配になってしまう。

確かに今日では薬用化粧品だけでなく、一般の化粧品にも効果・機能性が求められる傾向がとても強くなった。それでも、やはり成分ありきの化粧品開発に違和感を感じるのは私だけだろうか。化粧品は本来医薬品ではないので、技術だけを追求してつくるものではないと思う。効果・機能だけを追求し続けるのであれば、女性はもっと手軽な美容クリニックに行くのではないか。いまではレーザー治療も安く受けられるようになっている。しかしクリニックではなく、化粧品を選ぶのは「医療にはない価値」が化粧品にあるからだと信じたい。技術最優先の化粧品開発はそれを忘れているのではないかと思う。

私たちが化粧品開発をお手伝いする時は、もちろん画期的な有効成分が見つかっていればそれをもとにスタートするが、原料の効果効能だけではなく、どんなお客様に使ってもらう化粧品なのかを同時に検討し始める。つまりターゲットを定め、お客様のイメージペルソナを設定し、どんな生活をしている人なのかを徹底的に調査したり、オピニオンリーダーにヒアリングを行ったり、マーケティング作業も欠かさない。そして初めてお客様のベネフィットがイメージできる。ニーズを深掘りしながら、どんな悩みに対応したどんな化粧品が求められているかを絞り込んでいく。その結果どういう女性にどんな風になってほしいかというコンセプトが明確になる。だから化粧品は「女性の生き方」と密接な関係がある。そこが医療との大きな違いだと思う。まことしやかな効果だけを訴求するのではなく、お客様の生き方に寄り添い、夢を共有する、それが化粧品開発のあるべき姿ではないかと思う。

最近の化粧品販売会社のなかには、このマーケティング作業をせずに、注目されている成分をいち早く化粧品に取り入れて発売するような手法をとっているところもあるようだ。しかし成分名だけを連呼されても、化粧品を「買って使う喜び」にはならないのではないか。きれいになれる夢や使うことへの満足感が得られない商品、コンセプトの明確でない商品は、もはや化粧品としてのこだわりがないと言える。そうすると自然にお客様も、「美容にこだわりの無い人」が集まってくることになってしまうと思う。

 化粧品の差別化は、各メーカーの女性に対する考え方の違い=コンセプトの違いから生まれると思う。マーケティング作業を省いた、コンセプトのない化粧品開発は、お客様不在の化粧品開発といえるだろう。果たしてそれは化粧品開発者のあり方としてお客様の役に立てているのだろうか。もう一度再考したいものだ。

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