コラム
「週刊粧業新聞」9月7日号掲載2020.9.7(投稿日)
第58回「お客様と一緒に作る『共創化粧品』を!」

「週刊粧業新聞」 9月7日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第58回 お客様と一緒に作る『共創化粧品』を!』が掲載されました!

本文は、下記の通り。 

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『激変するコスメマーケット』
第58回 お客様と一緒に作る『共創化粧品』を!

 我社では新しい得意先様の仕事をスタートする前に、全社員で商品の試用モニターを実施させてもらっている。創業以来の習慣と言ってもよい。30~50代まで20名弱の人数なので、少人数の定性調査という訳だ。ただし社員はほぼ全員が、日常的に化粧品の仕事をしておりコスメ検定合格者だ。様々な化粧品の使用経験も多いため、商品に関しては少々辛口コメントが多くなる。ルールとして「徹底して消費者目線になって調査すること」を申し合わせている。
 販促や訴求内容の評価項目は、「理解できたか」「賛同できるか」「使ってみたいと思ったか」など。商品評価は「使用後の効果」や、「テクスチャーの感想」「使用方法の分かりやすさ」などの他に、最後に「個人的に買うか買わないか」など、多岐にわたる。この調査結果は得意先様には「ありがたい」と感謝されることが多く、その後も様々に利用されているようだ。
 このモニター調査結果を見ていると、最近女性たちの化粧品選びに変化が出てきたように思う。4~5年前まではモニター調査が始まる前にある程度、スタッフの回答が予測できたのだが、最近は買うか買わないかの「最終結論」を予測するのがたいへん難しい。まず、調査の前に私自身が先行モニターをするので、商品のテクスチャーや特徴は体験済み。その上で長年一緒に仕事をしている社員の年齢や肌質、肌悩み、好みなどは知っているので、好きか嫌いかくらいは予測できた。
 ところが最近はそのようなあいまいな評価だけでは購入に至らない。テクスチャーの好みや、自分の美容の習慣(ルーティン)、過去の美容履歴で使用したものよりも優れていること、現在使用している商品との使い勝手や相性、価格の納得感、販売ルート、プラスαのサービス内容など、全てがピッタリと自分に合わないと、「買う」という方に〇を付けてくれないのだ。中には単に「ブランドスイッチが面倒くさい」という回答もある。
 つまり、いまの消費者は商品選びに「自分の価値観を押し通す」ということがよく分かった。様々な調査をして消費者研究やペルソナ設定をしても、お客様は一人ひとり自分の価値観を持っている。そんな状況でいくら供給側が想像して商品を提供しても、なかなか多くの人の賛同は得られない。そもそも多くの人に賛同を得られる化粧品の時代は、終わりつつあると考えるべきなのかもしれない。例えばパーソナライズド・オーダー化粧品の開発という方法もあるが、コストを考えるとマーケットで大きなポジションを占めるのには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
それならば会員制の通販化粧品などで、「好みの似た人」に集まってもらい、供給側と一緒になって商品開発をしてもらえば、納得してもらえるものを提供できるようになるのではないか。つまり『共創化粧品』という訳だ。
供給するメーカーの仕事は、明確なコンセプトを打ち出して同じ好みのお客様を集めることと、一緒に商品開発ができる仕組み (欲しい商品の内容を徹底してヒアリングすること、バルクやパッケージの開発段階でも意見を吸い上げる仕組み) などを作ることができれば、『共感してもらえる化粧品』という考え方を一歩進めて、『共創する化粧品』ができるのではないかと思う。そうなれば、小さな規模でも強い支持者を抱えた多くのヒット商品が誕生して、化粧品マーケットが活性化するのではないかと、少し妄想気味に考えている。

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