コラム
「週刊粧業新聞」7月15日号掲載2019.7.15(投稿日)
第48回「もう一度考える『化粧品のモノづくり』とは!」

「週刊粧業新聞」 7月15日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第48回 もう一度考える『化粧品のモノづくり』とは!』が掲載されました!

 

本文は、下記の通り。 

 

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『激変するコスメマーケット』

第48回 もう一度考える『化粧品のモノづくり』とは!

 

 最近たて続けに、極めて限定的なお客様をターゲット層に持つ化粧品会社の案件を手掛けている。何が『限定的』なのか? と言えば、一方の会社はテクスチャーがかなりユニークで、いわゆるコモディティ型の化粧品に慣れた人は、手に取った瞬間に「えっ!」とびっくりする。顔にそのままつけるのはちょっと躊躇するほどだ。もう一方の会社の製品は、お手入れにとても時間がかかる。1回の使用時間が30分、準備や後のお手入れ&もろもろのかたづけの時間も入れたら、手際の悪い私なら小1時間もかかりそうだ。

 最初はこんなユニークものを「誰が使うのか!」と思っていた。ところが実際に使用してみて驚いた。塗布している最中は、べたべたするとか、なぜこんなに時間がかかるのかとか、不満&疑問で頭の中はいっぱいだったが、久しぶりに使用直後のつるつるした自分の肌に触って、「これは‥‥もしかしたらいいかもしれないぞ?」と感じ、翌朝になったらそれが「確信」に変わった。

 そしてこんなユニークな商品を長い間愛用し続けている、「ロイヤルユーザー」様たちにお話しを聞いてさらに驚いた。両社のロイヤル顧客たちは、いわゆる「美容オタク」と言ってもいいような、美容意識のかなり高いお客様たちだった。しかもお会いした全員が揃って、肌がきれいな美人。もちろん一般人である。

 もう一点、この両者の商品単価は一般的なコモディティ型商品に比較するとかなり高いランクに位置づけられると思う。フルラインで使用すると、投資金額もかなり高くなる。

 2社とも大手の化粧品会社ではない。初期の商品開発者が、個人事業と言えるような規模の中で、研究に研究を重ねてリリースした商品だ。共通しているのは、「女性の肌をきれいにするために、良いものを造る」という姿勢が貫かれていることだ。

 この2社の商品を使いながら、「化粧品のモノづくり」について、改めて考えさせられた。通常のモノづくりは、「誰に、何を、どのように届けるか?」というマーケティングのセオリー通りに進めようとすると、まずどんなお客様の役に立つのかを最初に設定して、そのニーズを深掘りしながら商品内容を突き詰めていき、販売方法や価格も決めると思う。

しかしおそらく先の2社は、限定された人数で、研究プロセスは膨大な時間を費やしているとしても、販売方法等の様々な条件設定はコンパクトに決めたのではないかと思える。販売体制や販売方法が他社と比較すると若干脆弱な印象さえ伺える。そのため「オタク」と言えるほど美容意識の高いお客様たちが、いろいろな情報を自ら検索して探し回った結果、この商品を見つけたようだ。そして使い始めた結果、「熱烈なファンとなっている」というのが現状だ。

 このロイヤル顧客たちは、こんなことも発言していた。「せっかく見つけた私の大好きな商品だから、あまり大きくなって、一般的な会社になって欲しくない!」。販売施策を考えるこちらとしては、嬉しいような? 困ったような? ある程度規模が大きくなければ、お客様に満足してもらえる充実したサービスはできないので、この発言には大いに悩むところだ。

しかしモノづくりの喜びは、マーケティングのセオリー通りにきちんと設計して出来上がったモノと、少人数の思いがリードしてできたモノと、どちらが喜ばれるのか、またどちらが作り手の喜びが大きいのか、改めて考えさせられる2社との出会いだった。

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