コラム
「週刊粧業新聞」12月9日号掲載2019.12.9(投稿日)
第52回「「世代」に寄り添う化粧品」

「週刊粧業新聞」 12月9日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第52回 「世代」に寄り添う化粧品」』が掲載されました!

 

本文は、下記の通り。 

 

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『激変するコスメマーケット』

第52回 「世代」に寄り添う化粧品」

 

前回取り上げたロングセラー化粧品は、幅広い年代から支持されることが一つの特徴であったが、今回はもっとターゲットを絞って「世代」にとことん寄り添う化粧品について考えてみたい。年齢と共に変わる肌質や肌悩みに着目した化粧品は、すでに多くの化粧品会社から発売されているが、もっとターゲット世代を明確にした化粧品があってもよいのではないかと思う。

世代によって、女性像は大きく変化する。子どもの頃はどんなことに夢中になったとか、学生時代はどんな文化に触れて育ったかという、その世代固有の特徴によっても変化するようだ。

世代に寄り添う商品企画は、1990年代のアパレル業界が得意としていた手法だ。当時のアパレル業界では、団塊世代、DC洗礼世代、ハナコ世代、ばなな世代、団塊ジュニア世代といった世代の特徴をベースにした視点から、商品の方向性を定めて企画販売し、華々しい時代を築き上げた。(当時の世代別の特徴は伊藤忠ファッションシステム株式会社が詳しく研究している。) 

しかし、全世代をターゲットとするファストファッションの台頭以降、この戦略は後退していったように見える。一方化粧品はもともと洋服と異なって「形」がない。そのためにこれまで厳密な世代論が生まれてこなかったように思う。緩やかな年代区分の肌質変化に寄り添ったアプローチが主流だった。ところが今日では逆に形がないからこそ、世代の感性に寄り添った商品企画、新しい発想の化粧品が生まれ始めている気がする。

その代表例が、資生堂の「プリオール」だ。同ブランドは、60代、70代の団塊世代(1946~1951年生まれ)、DC洗礼世代(1952~1958年生まれ)をターゲットに、「ラクしてキレイになる」ための商品がラインナップされている。これまでの同年代向け化粧品は、オーソドックスな高級感を打ち出すものが多かったが、「プリオール」は2人の個性的な女優がブランド名を明るく叫ぶCMが示すように、少しの背伸びで手が届くキレイを提案する。最先端の成分など関係なく、白髪やほうれい線などのリアルな悩みが「気にならなくなる」ことが大事であり、簡単にキレイを楽しむことを最優先とする。まさに「大人の七難すんなり解決」だ。これは団塊の世代、DC洗礼世代の特性と無関係ではない。彼女たちの青春時代は、新しい若者文化の幕開けであり、その後は高度経済成長時代の消費市場を牽引してきた。そのため現在も自分のこだわり、楽しみを強く求める傾向があり、上世代のシニアのイメ―ジとは大きく異なる。だからこそ彼女たちには、白髪、ほうれい線、唇の縦ジワといった気になる悩みを、ストレートに明るく軽やかに解決する商品が支持されているのではないか。

そう考えると、ハナコ世代(1959~1964年生まれ)、ばなな世代(1965~1970年生まれ)、団塊ジュニア世代(1971~1976年生まれ)では、どんなアプローチが考えられるだろう。ハナコ世代は、ワンランク上を目指して駆け抜けてきた。80年代に一世を風靡した外資系ブランドの美容液に夢中になった彼女たちも、現在では当時ほどの美容投資はできないかもしれない。しかし、若い頃に刷り込まれた価値観は大きく変わることはないだろう。

一方、大学生の頃に女子大生ブームを迎えたばなな世代は、ハナコ世代の本物志向を受け継ぎながらも、等身大の消費傾向の中でコンサバ系のファッションに古着やブランド物を組み合わせ、自分らしさを追求してきた。今、50代前半となったばなな世代には、どんな化粧品が支持されるのだろう。そして団塊ジュニア世代には? 

こんな風に世代区分ごとに、価値観や生活状況、ライフスタイル、今の美容意識を分析し、求める美容効果と化粧品を想像すると新しい価値を持った化粧品が生まれるに違いない。ぜひ徹底的に世代に寄り添った化粧品の企画も考えたい。

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