コラム
「日本流通産業新聞」4月22日号掲載2021.4.22(投稿日)
基礎講座Q&A vol.71 「Q.お金がかかる紙媒体をやめて、ウェブに移行したい」

「日本流通産業新聞」 4月22日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.71 「Q.お金がかかる紙媒体をやめて、ウェブに移行したい」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.お金がかかる紙媒体をやめて、ウェブに移行したい

今まで紙のDMや会報誌を作っていましたが、印刷費や送料がかかることもあり、今後はやめようと思っています。また、会報誌は直接売り上げに貢献していないように見えるし、社内のリソースも足らず、最近のお客さまは紙媒体など読んでいないのでは、と思っています。(中堅の通販化粧品会社)

A.紙媒体の力は健在相乗効果を狙って

 まず結論から言うと、紙とウェブの両方をやるべきです。通販事業の売り上げ拡大には、オフラインとオンライン、両方のコミュニケーションを組み合わせて相乗効果を狙うのが鉄則です。
 事業規模が小さいうちは、ウェブ媒体のみで新規顧客を獲得することが多いですが、商品送付時にブランドの世界観や商品情報を伝える同梱ツールは必須です。特に女性の美しくなりたいという欲求に応えるスキンケア商材は、商品を使うことによって実現する未来のゴールイメージを提示しないと使い続けてもらえません。
 ある程度、新規顧客が獲得できるようになったら、ロイヤル顧客を増やすために会報誌などのコニュケーションツールを始めるタイミングです。印刷効率などを考えると顧客数が3000人を超えたくらいでスタートするとよいでしょう。ただし、紙媒体だけ、ウェブだけ、というバラバラのコミュニケーションでは、お金をかけてもそれに見合った効果を得られません。両方の媒体を組み合わせることで、双方の特性が生かせるのです。

◆紙DMでCTR、CVを向上

 紙媒体とウェブの相乗効果については、各種の調査結果でも明らかです。同じターゲットに対して「紙のDMだけを送る層」「メールだけを送る層」「紙のDMとメールを組み合わせて送る層」で比較検証したところ、「メールだけ」「紙DMだけ」よりも「紙DM+メール」の方が、クリック率が高かったそうです(日本郵便調べ)。
 また、別の調査ではCV率についても違いが出ました。紙のカタログを送付した場合とメールでデジタルのカタログを送付した場合では、LPサイトへのCTRにはそれほど大きな差は出なかったが、CVには大きな差があったそうです。
 紙のカタログを送付したお客さまは、デジタルカタログを送付したお客さまに比べ、17倍以上のCVとなったとの結果が出たそうです(日本郵便調べ)。このことから、紙のカタログを受け取ったお客さまは、購買意欲が比較的高い状態でLPにアクセスしていたと推測できます。
 このように、今でも紙のDMが、お客さまの購買行動を後押しする大きな力を持っていることは確実です。

◆紙コストは顧客ランクに応じて

 もちろん紙媒体は印刷費や送料など部数を増やすほどコストがかかります。対策としては、顧客ランクによって送付ボリュームに差をつけることをお勧めします。
 例えば会報誌なら、長く愛用してくれているロイヤル顧客を中心に送りましょう。会報誌はブランドの世界観を伝えるのに有効で、自社のファン作りに力を発揮するからです。ライト層にはページ数を減らして送る、ウェブでのコンテンツ提供のみにする、などの手段で費用を削減するのもよいでしょう。

◆長い目でLTVを高めよう

 ちなみに、会報誌の送料を削減するために商品同梱で送る企業もありますが、そうすることで期間限定キャンペーンが行いづらくなり、会報誌で売り上げを作ることが難しくなります。ファンとのコミュニケーションだけが目的になってしまうと、コストのかかる会報誌を送り続けるのは不可能です。目先の送料コストを生み出すためにも、「売れる会報誌」を送る必要があるのです。「会報誌が届いたら商品を買う」ことを習慣付ける、つまり「お金を払う」ことで、お客さまはますますファンになるのです。
 新規の紙媒体広告についても、いきなりウェブに切り替えて紙媒体を一切やめてしまうのは危険です。お客さまの世代にも左右されますが、ある得意先では、紙媒体をやめたことで新規獲得はもちろん既存顧客の継続率も10~15%程度減ったとか。お客さまの心理として「勢いのあるブランドを使いたい」と思う人が多く、露出が少なくなると「このブランド、人気がないのかしら?」と不安に感じるようです。
 このように、ウェブ上でのコミュニケーションが主流になった現在でも、紙媒体の力は健在です。ただし、かけた費用に見合った効果が出るかは、コンテンツの内容や表現の品質、送付タイミングによって変わってきます。
 通販事業の良いところは、行った施策の結果がデータとして蓄積できるところ。過去の事例から導き出されたセオリーがあるとはいえ、自社の商品特性や顧客の行動パターンに合わせてテストしてみることが、自社らしい成功の近道と言えるのではないでしょうか。

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