コラム
「週刊粧業新聞」4月26日号掲載2021.4.26(投稿日)
第64回「第2のスター商品を作るには?」

「週刊粧業新聞」 4月26日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第64回 第2のスター商品を作るには?』が掲載されました!

 

本文は、下記の通り。 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『激変するコスメマーケット』

第64回 第2のスター商品を作るには?

 

 すでに一巡したかのように思っていたが、今日でも通販化粧品業界には続々と新規企業が参入している。別業種でブランド力や技術力がある大企業と、規模は小さいがアイディアで勝負する中小企業の2つに分けられるが、最近の傾向として後者の中小企業が多くなっているようだ。このような中小企業の特徴は、最初の商品は「単品リピート通販」を狙って、Webからお客様を定期購入に引き込むことだ。新規参入企業がスキンケアフルラインを入り口商品にするのは難しいためでもある。しかし、首尾よく単品のスター商品がヒットして新規獲得に成功しても、2品目、3品目のクロスセルが成功しない限り、ある程度のところで成長の限界にぶつかってしまう。
 長年、通販化粧品業界に関わってきたが、1品のヒット商品だけで100億円規模の大企業になれるところはほとんどいない。基本的に単品リピート通販で大きくなったブランドは、スター商品1品しか売れない。その理由はクロスセルの難しさにある。
 最初の1品目はブランドを全く知らないお客様の目に留まらなければならないので、インパクトが強く、ユニークなものでないと売れない。しかし、2品目も同じように個性が強い商品にしようと狙っても、1品目を超えることは難しい。しかも1品目のリピーターには響かない商品になってしまう。2品目のクロスセルで大事なのは、1品目の商品を買った人の志向に合った商品を開発することだ。
 成功事例として、オールインワンゲルが大ヒットして事業を拡大したC社を挙げてみよう。オールインワンゲルそれだけでは頭打ちになってしまうところだったが、大ヒットから数年後にBBクリームを発売してクロスセルに成功し、さらにお悩みケアに特化した、上位ラインの複数のゲルが売れたことで売上が急拡大し、単品リピート通販のビジネスモデルから、総合化粧品メーカーへ大きく成長した。そもそもオールインワンゲルはスキンケアが1品で完了するのがアピールポイントの商品。だから「時短・手軽」を好むゲルのユーザーに、ベースメイクが1本で完了するBBクリームが受け入れられたのだ。
 このようにC社は、化粧品の「使い勝手でつながった」商品をクロスセルすることで成功したが、別の方法もある。それは「コンセプトでつながる」方法。一度ブランドのファンになったお客様は、ブランドコンセプトに沿った商品であれば、2品目以降も購入してくれる。
 W洗顔不要のクレンジングがヒットしたM社は、一貫して「働くママを応援する」というブランドコンセプトを打ち出している。女性社長自らが子育てしながら仕事を続けたことで、コンセプトを体現している。商品も働く女性たちを想定したものになっており、お客様も会社のコンセプトを応援して買い続ける人が多い。もちろん商品開発そのものが顧客のニーズや特性に沿った内容になっていることも、2品目、3品目のヒットを出している要因のひとつである。
 また無添加化粧品のF社は、通販+店販の知名度を生かした全国展開で、敏感肌の若いお客さま層を多く取り込んでいるが、数年前から自社ブランドの「卒業生」に向けたシニアブランドを展開している。最初は既存客をターゲットにしていたようだが、最近では積極的に新規顧客を取り込んでおり、同時に離脱客を呼び戻すのに成功している。一貫したブランドコンプトがあれば世代を超えてお客様を引き戻すことが出来る、という事例だ。
 つまり第2のスター商品を開発するのに、コンセプトが定まらないままアイディアや成分だけを探しても、そこから次のスター商品は生まれない。最初のスター商品は、何が魅力でどんな人が買っているのか。それをきちんと理解したうえで、次にどんな商品を作るかを考える。

 第2のスター商品は、偶然ではなく、必然性を突き詰めたところから生まれる。どんなときも大事なのはお客様に「約束することのできるコンセプト」なのだ。

このページの上へ