コラム
「週刊粧業新聞」5月24日号掲載2021.5.24(投稿日)
第65回「世代を超えた化粧品開発は可能か?」

「週刊粧業新聞」5月24日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第65回 世代を超えた化粧品開発は可能か?』が掲載されました!

 

本文は、下記の通り。 

 

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『激変するコスメマーケット』

第65回 世代を超えた化粧品開発は可能か?

 

 前々からこのコラムでも執筆していることだが、お客様の年代と商品開発や販売促進スタッフの年代に大きなギャップがある場合、時々「おやっ!」と思うようなことが起こる。
例えば、私のようなシニア世代にはこの世代だからこそ感じる肌悩みが出てくる。若いころには全く自覚していなかった、ほうれい線の出現に驚いたり、時にはやたらに瞼が重く感じたり、目の周りが緩んでいたり、気がついたらかなりの乾燥肌になっていたり、数え上げればきりがない。
そんな状態の中で20代の担当者が開発した商品を使わせてもらうと、「あっさりし過ぎ」と感じたり、逆に「こんなにもっちりしなくてもよいのに」と感じたり、なかなかしっくりくるサンプルに出会わない。また販売促進の場面では、「いくらシニアでもこれは使わないわ」というプレゼント品がついていたり、若々しいブランドとコラボのメイク品がついていたり、こちらの年代をどう想定しているのか、疑問に思うことも多い。私自身も若いころは、「シニアの肌悩み」を思いやることもなく、また「自分が体感する」ことは全く想像の範疇外にあった。
 しかし年齢を重ねてくると確実に年齢による肌悩みを感じてくるし、この感覚は思い出せば、10年前の悩みとは別のものに変化している。そんな状態なので、いまの自分より20歳も、あるいは30歳も若い人にこの感覚はわからないのではないかと思ってしまう。そのように考えると、自分の肌悩みを本当に自分事として共感してもらえるのは、少なくとも自分に近い世代の方々だと思う。ところが現実にいま企業内で働いている女性たちは、20代~40代が多く、その世代がシニア向けの化粧品開発や販売促進を担っていることも事実。したがって「おやっ!」と思う現象が起こる。
 一方化粧品マーケットも様々なメーカーが群雄割拠して、販売チャネルも多様化し、業界としてはこれまでに経験したことの無い程成熟期に突入した。そうなると今まで以上にコモディティ型商品ではなく、対象者が絞られた、または使用目的が限定された、ユニークな商品が求められるようになっている。さらに追い打ちをかけるように、ECの検索機能と通信販売の機能が日常の買い物パターンになってきたので、ターゲットはより細分化され、機能もジャストフィットする商品でないと売れない。そんな状況の中で、ターゲット層の感覚を体感できない世代が企画や開発をしていると、チグハグな商品が生まれたり、トンチンカンな販促が実施されたりするようになる。
商品を使う人と作る人の世代間ギャップを解消するために最もよい方法は、お客様に商品開発に参加してもらうことである。まずはターゲット層の「ペルソナ設定」のためにライフスタイル調査から肌悩み調査まで、徹底的に協力してもらい情報提供をしてもらう。その場合はこれまでの自社顧客か、あるいは今後取り入れたいと考えている顧客層に協力してもらうのが良い。
 加えて欲しい商品も羅列してもらって、「夢のような商品」の要望をたくさん出してもらえると、とても役に立つ。また、バルクが出来上がってきたら、先行モニターとして何度も何度も試用してもらい、正直な感想をたくさん出してもらいたい。そうすれば世代間ギャップのあるメーカー側の担当者も、具体的に要望を理解できるので、その年代にマッチした商品を開発していくことが出来ると思う。お客様参加型の企画開発をお勧めしたい。
 ちなみに通販化粧品で成功している弊社のお得意先様各社のロイヤルユーザー様にお会いすると、不思議と社内のキーマンとなっている女性たちと同世代で志向性も近いことが多い。「お客様のペルソナ像は社内にあり!」である。自然に「悩みを共感できる」仕組みが出来上がっていると言えよう。

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