コラム
「週刊粧業新聞」8月1日号掲載2022.8.1(投稿日)
第76回「レガシーをどう引き継ぐか?」

「週刊粧業新聞」 8月1日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第76回 レガシーをどう引き継ぐか?』が掲載されました!

本文は、下記の通り。

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『激変するコスメマーケット』
第76回 レガシーをどう引き継ぐか?

 弊社が多くお手伝いをしている“通販化粧品”企業は、最近、経営者の代替わりが続いている。
店販化粧品や総合通販に比較して歴史が浅く、創業からの年月が比較的短いため、これまで創業経営者が現役で頑張ってきたところも多い。そのため今まさに代替わりのピークになっているのかもしれない。
 代替わりの形も様々。オーナー経営者が親族や代表社員に引き継いでいるケースや、M&Aによって株主が代わったケース、中には吸収合併などのケースもある。代替わり自体はすべての組織で起こることなので、改めて論じることではないのかもしれない。
 しかし私は通販化粧品という業態の特徴から考えて、経営者の代替わりは慎重にすべきだと思う。
通販化粧品ビジネスは、それこそ100社あれば100のスタイルがあると言ってもよいくらい、各社様々なビジネススタイルを持っている。同一業種だからといって、ビジネスの基本的な勝ちパターンがある訳ではない。また商材そのものが多岐に渡りバリエーションが豊かで、使用目的や使い方、効果効能まで各社バラバラの美容理論(メソッド)が構築されており、結果や回答が一つではないからだ。
 そうしたいわばカオス状態のビジネスを引き継ぐのはとても難しい。さらに“通信販売”というシステムは、小売店というフィルターを通さずに、直接お客様とつながっているだけに、クイックリーな変更ができ難い点も、引き継ぎの難しさを強固にしている。
 あるブランドのお客様インタビューで、10年以上使い続けてくださっているお客様にお会いした時のこと。
「私、3年前くらいから、何か変わったと感じていたのよ。経営者が変わったの?」とズバリ聞かれた。その会社はブランド名を社名にしているので、株主であるオーナーの変更は広くお客様に知らせている訳ではなかった。しかも3年前と言えば株主が変更になったちょうどその時。続けて「本心を言うと前の方が好きだった」とのこと。OEM先も、開発の社員も、販促スタッフも全く同じであるにも関わらず、ずばりお客様に疑問を呈された時は、正直なところ背筋が凍り付いた。
 お客様は愛用者であればあるほど、商品のテクスチャーから、販促物やサービスまで丸ごと含めて「好き」なので、こちらが変えていないつもりでも、微妙な社内の変化を感じているのかもしれない。
 コミュニケーションツールにおいてもクリエイターを変えた時に同様のことを言われたことがある。そのため弊社では、商品や販促、コミュニケーションの変更をお手伝いする時は、お客様調査を徹底し「良い方向に変えていく」ためのリニューアルであることを充分にアピールして、変更や切り替えを実施することをお勧めしている。それでも離脱されるお客様は必ず存在するので、経営者が変わって様々な価値基準が変わると、ある程度離れてしまうお客様が出てしまうのは仕方がないことかもしれない。
 後は、未来を託された経営者がビジネスをどのように進化させていくか、変更するべきところと、守っていくべきところのメリハリをつけるべきだと思う。要は代替わりの目的によって変更すべきポイントは変わってくるということだ。
通販化粧品というシステムだけを引き継ぎたい場合は、商品を大きく変えることもあるかもしれない。これまでのお客様を大事にしたいと思うのであれば、従来のコンセプトに沿って、これまで充実させられなかったことを改善して、より強い組織にするべきだ。
つまりレガシーをどのように活用して、さらにその先に価値あるものを構築するためには、後を引き継ぐ人々の「思い」がどこにあるのかということが最も大切なのだと思う。

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