コラム
代表鯉渕へのインタビュー2010.12.3(投稿日)
私が起業した理由

今年、会社設立28年を迎えるフォー・レディー。29歳の時に独立し、女性による女性のための広告制作会社を設立した、当社社長の鯉渕登志子。今回は、その過去を振り返り、起業するまでの道のりを聞きました。

 

  • 短編小説を書いていた日芸時代
    就職にはあまり乗り気ではなかった

 

社員:就職する前から、起業したいと考えていたのですか?
鯉渕:まったく!本気で就職活動など考えていなかったので、出遅れたのよ!大学の教授に「先生、一生楽して暮せるにはどうしたらいいのですか?」と聞いていたくらいだから(笑)。

社員:そうなのですか!では、就職をするつもりはなかったのですか?
鯉渕:真剣には考えていなかったわ。当時の日大芸術学部はそんな校風だったと思う。学生時代、1週間に1篇の短編小説を書いて、みんなの前で読み上げるゼミなんかに夢中になっていたのよ。週1回小説を書くことは楽しかったなあー、お陰さまで、モノを見る目、想像力&創造力、感性のようなものが自分の中でふつふつと育っていったと思う。もうひとつは、バルザックの研究かな。これでリアリズムのある文学とは何か、少しわかった気がする。でも、自分にはその他に能力がなかったので、文章を書いて食べていくしかないと思っていた。だから、教授に「もう少し勉強したいので大学院に進もうと思うのですが…」って言ったのだけど、「バカなことを言うんじゃない、就職して世の中に出なさい」と諭されたの。そこで、出遅れているから、落ち着く先もなく、仕方なくと言ったらなんだけど、婦人服組合の広報室に勤務している先輩に相談したのよ。

 

  • アパレル業界のスポークスマンとして
    走り続けて出した答えは

 

社員:アパレル業界からキャリアをスタートしたのですか?
鯉渕:先輩に相談したら「うちに来ればいいじゃないか」と言ってくれたのよ。それでとりあえず卒業後の進路は決まったわけ。婦人服組合の広報室には大学の先輩が何人かいて、作家志望の学生の受け入れ先という感じだったわ。仕事場で夜中に文学論を話していたような、どことなく校友会のような雰囲気だったわね。

社員:楽しそうな職場環境ですね。そこでどのような仕事をしていたのですか?
鯉渕:団体の広報・PR誌の発行などをしていた部署で、その時は、日本のアパレル業界の成長期で、企業トップの取材インタビューも多く、忙しい毎日だったわね。

社員:忙しそうですね?。
鯉渕:そうなの!でも、業界団体なのでお役所のような面もあり、婦人服業界なのに幹部はオジサンたちが陣取り、大きな権威を持っていたのよ!(怒)業界ではカミナリ親父で通っていた、ある社長を取材した時開口一番、「若い姉ちゃんが来たけど、大丈夫かい?」なんて言われたのよ!(怒怒怒)ムッとした私はすかさず言い返した。「社長、何のご職業で事業をやられていますか?婦人服でご商売されているのでしょう?女性の意見を聞かなくていいんですか?」。当時23歳の私に切りかえされて、言葉を詰まらせていたわ。

社員:しかし、よく切り返すことができましたね。私だったら恐れおおくてできませんよ。
鯉渕:今ではそんなこというオジサンもなかなかいないけど、私も若かったので、当時「女性を蔑視するにも程がある!」と思って言い返しちゃったの。でも、その社長と30分も話したら「ほう、お前さん、なかなか勉強しているのだね」って感心されたの。以来、事あるごとに私を呼びつけるようになって、親切に業界のことをアドバイスしてくれるようになったの。

社員:社長の仕事に対する情熱が伝わったのですね。
鯉渕:そうね(笑)。それから起業するまでは、東京のアパレル業界約500社が集結した団体の広報マンとして、取材活動に飛び回ったわ。広報活動は自分の目で確かめる現場主義。バルザックの”現実・写実主義”から学んだのだけれど、現場を見聞きしなければリアリティのある文章にならないのよね。だから、私が手掛けた記事の1本1本には真実味があり、信頼を得られたのだと思うわ。
何しろアパレル業界のトップ相手だから、緊張感もあったし、厳しく鍛えられたことが今日の私の糧になっていると思う。人脈は広がる一方だったけど、どんなに表面上うちとけても旧態依然の組織の中では、やはり若い女性の発言権はなかったの。なかなか自分の思うようにはいかなかったわ。

社員:なるほど、頑張っても女性が認められることは難しい時代だったのですね。
鯉渕:そう。いくら頑張っても、そこでは真から認めてもらえないということにジレンマを感じ、「外に出たらもしかしたら認めてくれるかもしれない」って思うようになったの。そこで自分でも少しは”ベテラン”と思えるようになった頃、自分の力を試みるつもりで、女性が頑張った分だけ、認めてもらえる会社を作ろうと思うって、フォー・レディーを設立したの。

 

(Vol.2に続く)

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