コラム
電車内でメイク。これって迷惑行為?2010.12.3(投稿日)

「電車内で化粧するのは迷惑行為なのでしょうか?」…少し前だが、新聞の投稿欄に若い女性からこんな声が寄せられていた。折しも電車の中で化粧する女性への批判が高まっており、いつかはこんな意見が出ると思っていた矢先である。

私も、電車内メイクには「まったく、こんなところで」と眉をひそめる派である。   しかし、改めて考えるとそれが迷惑という理由をこの投稿者に説明できるだろうか。ある私鉄内のポスターには『こんな迷惑行為はやめましょう』として、携帯電話での通話、ヘッドホンの音漏れ、新聞の広げ読み等と共に化粧が挙げられていた。化粧以外の項目が迷惑行為であることについては、先の投稿女性も異論は唱えまい。耳元でシャカシャカ音を聞かされたり、人の新聞が顔に触れたりするのは非常にイヤである。

だが、おとなしく化粧に励むのは果たして迷惑か。もちろん電車が揺れた弾みで、マスカラが隣の客の耳の穴を直撃したり、口紅が殿方のシャツに疑わしき跡を残したりすれば、まさしく迷惑行為だろうが…。

「迷惑でないけど、何となく不愉快」程度の答えが妥当?そう思いつつ、ある話を思い出した。都内の某有名女子校に「恥を知れ」という校訓があると、その学校の卒業生が教えてくれたことがある。「恥を知れ」とは、ちょっとギョッとする言葉である。しかしこの言葉には、人に対して恥ずべきことをしていないか自らを戒めなさい、という思いが込められているそうだ。「そんな昔風の考えは理解不能」などと捨ててはおけない言葉だ。他人に実害を加えることのみが「ならぬこと」とは限らない。その概念がDNAに染みついているから「迷惑云々でなく、電車内の化粧は褒められたことじゃないのよ」という論理にムリはないのである。昔の人はえらいなぁ、と思う。ダメなものはダメと明快に言ってくれるのだから!

とはいえ、寝坊した朝、慌てて電車に飛び乗ったものの「ノーメイクで会社に行きたくなーい」と思うのも女ごころ。そんな女性がスッピンから見事な美女に変身したプロセスを目撃した経験がある。周囲の殿方は、彼女のメイクを珍しそうに眺めていた。「あ~あ、女の化ける秘密をばらしちゃって。それって、同じ女性にとってすこぶる迷惑よ」…ムム、間違いない!女性の皆さま、電車内の化粧は疑いなき迷惑行為です。即刻、やめましょう。
A.T

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