本屋さんが好きだ。
広々としたフロアに膨大な本が並ぶ大型書店もワクワクするし、
店主の個性が感じられるこぢんまりとした個人書店にも心惹かれる。
だから、全国の書店が激減しているというニュースを聞くと悲しい気分になる。
せめて売上にささやかでも貢献しようと、欲しい本はネットではなくなるべく
実店舗で買うようにはしているが、これ以上身の回りのモノを増やしたくない
という気持ちもあり、なかなか大きな売上に貢献できないのが歯がゆいところだ。
しかし本屋さんも黙ってはいない。本を売るための様々な「仕掛け」があちこちで
展開されている。ちょっと前だと、2012年~2013年に紀伊國屋書店で開催された
「ほんのまくら~書き出しで選ぶ100冊~」。情報は、表紙に書かれた本の
書き出しだけ。著者もタイトルもわからないまま、書き出しの文章だけを見て
買うかどうかを判断するというものだ。
そして、盛岡のさわや書店で売り出した「文庫X」。表紙を隠してカバーに手書きの
推薦文を載せ、これまた著者もタイトルもわからないというスタイル。
そして、北海道の岩田書店が始めた「1万円選書」。これは、店主がその人の読書傾向や
人生観を踏まえて、合うだろうという本を1万円で見繕ってくれるというサービス。
大好評で年に数回の抽選方式となっているそうだ。
これらの成功した仕掛けに共通しているのは、あえて未知の部分を設けることで
得られるワクワク感ではないだろうか。買う側としては中身の確認もできないので、
ある意味バクチ的な買い物だが、小さなバクチなら日常生活を破綻に導くことはなく、
逆にちょっとしたスパイスになる。そうした非日常の楽しさが、購買意欲を喚起したと
言えるだろう。
また、「1万円選書」には、さらにオーダーメイドサービスの特別感がある。そして
洋服や靴のオーダーメイドとは異なり、その人の“内面”に対するオーダーメイド
というのが、もしかしたら占いや心理テストのような楽しさが期待されているのでは
ないだろうか。
ほかと同じことをやっていたのでは売れない、お客様を退屈させない、個別の
きめ細かいサービスを提供する…これらは、私が普段携わっている化粧品の
販促企画や広告制作でも重要なことだ。これが中々難しい部分でもあるのだが、
本屋さんに負けないよう頑張っていきたいものである。
(K・O)