コラム
「日本流通産業新聞」8月26日号掲載2021.8.26(投稿日)
基礎講座Q&A vol.74 「Q.シニア世代をもっと知るために何が必要か?」

「日本流通産業新聞」 8月26日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.74 「Q.シニア世代をもっと知るために何が必要か?」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.シニア世代をもっと知るために何が必要か?
 弊社はシニア世代向けの化粧品を通信販売しています。新聞広告、折り込みチラシ、インフォマーシャル、他社同梱、シニア向け雑誌などが主な新規獲得メディアです。問題は社員が20~30代と若く、シニア層の美容や生活などの価値観をイメージできていないことです。そのためお客さまとのコミュニケーションにズレが生じているような気がします。(中堅の通販化粧品会社)

A.シニアとより触れ合って顧客像を掌握して

◆シニアが関わらない弱点

 特に新聞やチラシ、インフォマーシャルなどを新規獲得の入り口にしている通販化粧品会社の顧客は、ほとんどがシニア世代です。ところが運営している社員たちは意外に若く、ご相談のようにコミュニケーションにズレが生じてしまうことも、しばしばあるようです。それだけではなく、商品開発でもちぐはぐな品ぞろえになってしまうようなことも起こっています。
 このような現象が起こる理由は、やはりシニア世代向け通販化粧品の企画や販売に「シニア世代の人が関わっていない」ことが大きな原因ではないでしょうか。
 シニア世代向けの化粧品ビジネスにおいて、その世代の女性たちが関わっていないと、彼女たちの今の生活の実情や過去の美容体験を把握するのが難しくなります。そのためシニアになって初めて体感する「肌の実感」もなかなか共有できません。販売に欠かせないうれしいサービスや、世代の文化が表れる”言葉遣い”も適切な表現ができにくくなります。つまり「気持ちを掌握できなくなる」のではないかと思います。
 現在の日本では、一部の人を除いて、なかなか60歳以上の女性が働き続けるのは難しいと思います。もちろんご本人たちはまだまだ元気なので、もっと社会に出て活躍したいという思いはあるはずです。彼女たちの知識や労働力を生かす社会の仕組みがないというのが現状です。
 そもそもシニア世代とは、個人差もありますが60代後半~70代、80代になって、初めて本人も「シニア」という言葉を受け入れているような気がします。それだけ社会の高齢化が進み、現役の時間が長くなっているのではないでしょうか。

◆ひとくくりにしない

 また、「シニア世代」とひとくくりで捉えられることにも違和感があります。シニア層といっても、60代と80代では生活や経済環境、体や肌の状態は全く異なります。
 例えば収入だけを考えても、年金だけに頼った生活なのか、その他の収入の手段があるのか、資産状況はどうなのかなど、それぞれの懐具合によって、ライフスタイルや消費行動は大きく異なっているはずです。
 同じ年齢の人でも健康状態はさらに差が出ます。寝たきり状態の人から、現役世代をしのぐほどアクティブに体を動かしている人もいます。美容と関連の深い肌悩みに至っては、そもそも自らの肌状態を意識しない人や、気付いてはいるけど「年寄りだから仕方がない」「年相応」と諦めている人もいるようです。
 さらに興味関心の分野では、もはやグルーピングできないほど、千差万別になるのではないでしょうか。

◆耳傾ける努力と習慣を

 このようにさまざまな価値観を持つシニア世代のお客さまに向けて、誰にでも役立つ情報を発信するのは極めて難しいことです。この世代の方々に本当に喜んでもらうためにも、もっと自社のお客さまの声に耳を傾ける努力と習慣を作ってほしいと思います。
 弊社ではこれまで定期的に得意先のお客さまを呼んで、グループインタビュー(お客さま座談会)を行ってきました。その目的は、商品についてはどのように使っているか、使用感はどうか、使用後の実感はどうかなどですが、情報提供やコミュニケーションについても、具体例を挙げて細部まで突っ込んだヒアリングしています。それが「シニア世代が関わっていないシニア向け化粧品の弱点」を払拭(ふっしょく)する方法として有効だと考えているためです。
 コロナ禍の中にある今も、人数を絞って、感染予防対策を徹底しながら直接対面でヒアリングを実施しています。今回のコロナ禍で、通販化粧品は店頭販売に比較すると大きな落ち込みもなく、堅調ぶりを見せていますが、通販といえども直接お客さまの肌を見て、直接ご意見を伺う「お客さまヒアリング」の大切さを実感しています。
 これから若い社員たちに、シニア世代を理解してもらうためには、自社のシニア世代のお客さまに直接お話しを聞き、直接会える機会をもっと増やすべきだと思います。そうすると、一般的な、あるいは他社のシニア世代ではなく、自社のシニア世代のお客さまの特徴や個性を的確に掌握できるようになり、差別化戦略も取り入れやすくなります。アフターコロナの戦略をここからスタートしてもよいのではないでしょうか。

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