コラム
「日本流通産業新聞」6月1日号掲載2023.6.1(投稿日)
基礎講座Q&A vol.92 「Q.人手が足りません」

「日本流通産業新聞」 6月1日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.92 「Q.人手が足りません」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.人手が足りません
コロナ収束後も、飲食業界などからは「お客さまは戻ってきたが働く人が戻ってこない」と聞こえてきましたが、わが社にも人手不足の影響が出ています。配送センターやコールセンターは人手が足りません。本社の人間がサポートに入っていますが、いつまで続くか心配です。

A.人手不足は永遠の課題、業務改善のチャンスにしたい

 

◆本社の人が現場支援に
 あらゆるところで人手不足が大きな問題になっています。通販企業でも、工場、配送センター、コールセンター、ドライバー問題などが山積みになっています。「注文があるのに出荷できない状態」になっているところもあるようです。
 化粧品通販の会社でも、本社の企画や総務のスタッフが、配送やコールの「現場支援」に出かけることが多くなってきたような気がします。かつては経験の浅い社員に現場の経験を積ませるための業務として配属されているケースもありましたが、現在は自分の業務をこなしながら、支援業務としてダブルワークをしているような状況です。
 今や現場の人手不足は予断を許さない状況なので、本社のバックオフィススタッフ(企画や総務など)のサポートなしには成り立たないのが現状のようです。あらゆる業種がそんな状況なので、仕方がない側面もありますが、終わりが見えないので、本社業務がおろそかになることで、何か問題が発生するのではないか、あるいは施策を考える企画スタッフも、人手がかからないことを優先して、お客さまサービスがおろそかになるのではないか、などの心配は尽きません。何よりスタッフのモチベーションが下がって、サービス品質が落ちてしまうことだけは避けたいです。

◆当面はダブル業務でしのぐ
 とはいえ、すぐに解決策は見つからないので、当面のダブル業務は仕方がないと考えられます。ただしサポート業務を有意義な業務につなげる工夫は必要だと思います。
 一つは、普段と異なった業務を担当することになるので、新鮮な目で現場業務を見直すことです。もちろん現場には専門職のプロが多くいらっしゃいます。にわかスタッフには、業務のスピードや段取り、熟練度は全く追い付きません。
 ただし現場業務の素人だから気付く疑問もあるはず。あるいは企画者の目線だからこそ現場業務の問題点にも気が付くかもしれません。
 ある会社では、コロナ禍のときに旅行関連会社の社員を何百人単位で受け入れたことがありますが、異業種同士が一緒に仕事をすることで、さまざまな気付きがあったようです。このように、支援業務を「気づきと発見の場」として、その後の改善改革に結び付けられるような仕組みを作れば、ダブルワークも楽しくなるのではないでしょうか。「改善プロジェクト」などを立ち上げても良いでしょう。
 二つ目は、ダブルワークを一時しのぎではなく、ルーティン化するのはどうでしょう。私事ですが、伯父が地方都市で創業した百貨店は昔から販売員がダブルワークでした。例えば上層階の家具や雑貨売り場の社員は、夕方暇になると地下フロアーに降りてきて、エプロンを付けて総菜売り場を手伝うという具合です。
 この百貨店は地元密着型で地方百貨店が苦境に立たされたときも社員の結束力が強く、今でも業態転換もせずに営業しています。この例は、創業期の家業の延長線のような運営の事例です。時代とともに家業から会社組織になり、業務は労働になって、各々の専門職が出てきたことは良いことですが、今日では「全体を俯瞰してみる」ことが少なくなってきたような気がします。

◆改善策を考えるチャンス

 最近は人手不足に拍車が掛かって、さらに業務が細分化され、本来シンプルだった業務が複雑化している例もあるように感じます。ダブルワークをその改善のために、活用できないでしょうか。

 例えば専門化しすぎた業務を新たな視点で見ることで、思い込みを排除するキッカケに。あるいは細分化された業務を俯瞰で見られる経験を養い、トータルに考えられる人材の育成にも活用するなど。人手不足は経営者目線で考えれば、人材を育てるチャンスとも言えます。単なるお手伝いのダブルワークは苦痛でしかないので、改善策を考える楽しみを作って、それを仕組み化することが必要だと思います。
 例えば改善策アイデア募集をセットで実施するとか、さまざまな業務をサポートした社員には「サポートポイント」を付与して評価するとか、まずは楽しくイベント化するのも一案だと思います。
 人手不足をダブルワークでしのいでいる間に、新たな仕組みで、適正な業務量を楽しみながら仕事ができるように工夫するべきでしょう。社員が現場業務を楽しんで行っているかどうかは、商品を受け取ったお客さまにはすぐに伝わります。

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