コラム
「日本流通産業新聞」12月7日号掲載2023.12.7(投稿日)
基礎講座Q&A vol.98 「Q.顧客像がつかめず、調査でも傾向が分からない」

「日本流通産業新聞」 12月7日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.98 「Q.顧客像がつかめず、調査でも傾向が分からない」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.顧客像がつかめず、調査でも傾向が分からない
弊社のお客さまイメージがあまりはっきりしていないので、調査したところ特徴的な傾向は出なかったようです。ほとんどのお客さまから「価格を安くしてほしい」という要望が寄せられ、それ以外のニーズにはあまり声が上がらず、どうやら美容に感心の低いお客さまが多くなってきたような気がします。(中堅通販化粧品会社)

A.顧客は新規獲得メディア、訴求点、施策・特典ですぐ変わる

◆思ってもいない客層が

 得意先のお客さま調査で、とてもショックなことがありました。敏感肌で苦しんだ経験から、同じ肌悩みを持つ女性のために、ある女性社長が時間をかけて開発した商品がありました。しかしお客さまを集めて調査をしたところ全く肌悩みはなく、安売りにつられて購入したお客さまばかりだったのです。
 このように通販化粧品では、本来の開発意図とは全く異なるお客さま層に、目的とは別の使われ方をしている例がよくあります。
 その理由は、販売手法にあるのではないかと考えられます。通信販売は多くの場合、さまざまな通信手段でお客さまとやり取りしますので、対面販売と異なり、情報提供あるいはヒアリングの量が圧倒に少なくなっています。
 その上、メディアを通じて新規獲得広告を展開するため、分かりやすいキャッチフレーズをアピールして売るのが王道になって定着しています。お客さまの肌悩みをヒアリングして寄り添うのは、その後のCRMで展開しますので、まずはメディアの選び方が大事な関門となります。
 そもそも各社ともメディアや広告代理店との付き合いがあるので、必ずしも設定したペルソナ像や商品にフィットするメディアにばかり出稿できる訳ではありません。ボリュームを取るためにはリーチが広いメディアを選ばざる得ない場合もあります。
 次に多くのメディアの中で、瞬時に選ばれなくてはならないのでインパクトのあるキャッチコピーが不可欠となります。じっくりと説明が必要な商品も、凝縮された一言で表現しなくてはならないのです。それもクリエーティブテストと称されて、さまざまな表現が試されます。場合によってはお客さまの期待を高めるためにベネフィツトまでいろいろな訴求方法で試されます。
 最後に、その場でのお得感を演出するための、値引きやプレゼントや即効性のあるキャンペーンをするのが常識になっています。
 これらのさまざまなテストを経て、反応率という数字をチェックし、より効率のよい数字が出た施策を続けることになります。

◆数字を追いかけたら

 その結果、最初に設定していたお客さま像とはまったく違う、商品の内容とニーズがかけ離れたお客さまが集まってしまうということが起こります。その事例が冒頭で紹介した事例です。
 また、値引きを前面に打ち出した商品では、お客さまの共通項は「値引き購入」のみで、お客さまの肌悩みもライフスタイルや価値観も全くバラバラという例もあります。気が付いた時には、お客さまがそんな大集団になっていたという事例も多くなるわけです。
 そうなると、マーケティングの原理原則である「誰に、何を、どのように売るか」を全く決められず、まるで暗闇の中でビジネスをしなければならない状況に追い込まれます。規模が大きくなってから、そのような状況を修正するには大きな困難が伴います。

◆誰に、何を、どのように

 化粧品を販売するという行為は、お客さまに寄り添い、その生活を知った上で適切なご提案が必要です。毎朝お客さまがどんな状態でお肌のお手入れをされるのか、何のためにメイクをするのか、ライフスタイルを知らなければ役立つご提案はできないはずです。
 また、何の目的でそのアイテムを使用されるのか、他にどんな商品を使っているのかを知らなければ、余計なご提案をしてしまうことにもなりかねません。
 化粧品はお客さまに気持ちよく使い続けていただくことで、「きれいにする」「気持ちよく自信を持てる」という本来の目的を果たす商品です。そのためお客さまに使い続けていただくことを、われわれが十分にサポートする必要があると考えます。私は、化粧品の価格にはその値段も含まれていると考えています。

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