コラム
「週刊粧業新聞」3月4日号掲載2024.3.4(投稿日)
第93回「「誰のために、何のために」を振り返る?」

「週刊粧業新聞」 3月4日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第93回 「誰のために、何のために」を振り返る?』が掲載されました!

本文は、下記の通り。

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『激変するコスメマーケット』
第93回 「誰のために、何のために」を振り返る?

 弊社は42年前に「広告企画・制作会社」としてスタートしたのだが、初期の頃はアパレル通販のマーチャンダイジングとカタログ制作をメインの業務にしていた。銀座で創業したこともあり、大手化粧品会社の新規事業などをお手伝いしたご縁で、店頭販売、訪問販売、ネットワーク販売、通信販売など様々な化粧品のビジネスに関わることになった。
 特に「通販化粧品」は、業種として産声を上げた初期のころから携わってきたため、業界の拡大とともに様々なことを学ぶことができた。最近ではその知見を少しでも事業会社の方々にお役に立てていただこうとセミナーも開催している。
 その影響かもしれないが、私を通販化粧品のコンサルタントと間違えて、様々な相談事が持ち込まれる。最近は制作会社としての問い合わせより、その方が多いくらいだ。(笑)
 最近の相談事は、新規獲得がうまくいかないという課題が多い。これまでの販売のデータやクリエイティブも見せていただき、「改善策を教えて欲しい」というような内容である。クリエイティブの不足や不備はその場で、対処療法的に指摘できるが、もっと根本原因に課題が残る場合もある。そもそもターゲットやコンセプトの設定があいまいで、販売計画に無理がある場合だ。
 化粧品は肌タイプや加齢による肌質の変化、個々人の肌悩み、どんな肌になりたいか、どんなキレイを目指しているのか、それこそ千差万別。しかもその効果を自分の肌で実感しないと買い続けてもらえない。そんな中で「どんなお役に立つのか」が明確でないと、目標も計画も立てられない。
 私はこれまで広告制作をお手伝いする時も、マーケティングのお手伝いをする時も、まずは商品を使わせてもらって、「この商品は、どんな人のために、何の目的で作り、どのように売るつもりなのか」を最初に聞かせていただくことにしてきた。それが商売の基本だと思っている。ところが最近では新規獲得もままならず、多くの事業会社様が苦境に立たされている。そのためついつい目先の施策や対策を考えなければならないと焦ってしまう。その気持ちはよくわかるし、私たちも一緒に対策を考えている。ただし対処療法と根本原因にメスを入れることを同時に進めないといけないと思う。
 収益を最も重要に考えるのは、どんなビジネスでも同じだ。だから計画も必要だし、施策も考えられる。しかし最も大切なのは、「誰のために、何の目的で、どのように提供するか」という「マーケティングの基本のキ」、つまりコンセプトだ。評価としての数値目標があるのは当然だが、コンセプトがあいまいで、数値検証のみでPDCAを回していくと、中長期的にはビジネス自体が縮小してしまうのではないか。
 そのうえ通販化粧品は、明確なターゲットも定めずに、メディア選択のテスト、訴求ポイントのテスト、施策のテストを繰り返し、数値目標だけを目指して内容を変化させていくと、最終的には、狙ったターゲットと全く異なるターゲット層が集ってしまうことも起こる。短期的な数値が悪いため、コンセプトや訴求ポイントの修正を繰り返していると、そのたびごとに置き去りにされるのは使い続けるお客様ということになる。
 ブランドコンセプトはお客様との約束のはずだ。それを実現しないうちに、手のひら返しはできない。「お客様との約束を果たすため」という立ち位置に戻れば、打ち手はいくらでも出てくる。一番大切な、自社ブランドの「存在理由」にこだわりを持たず、数値データのみを見ているだけでは、対処療法のみになってしまい、根本原因に手を打てなくなるのではないか。
 もう一度、「誰のために、何を、どのように提供するのか」コンセプトを再点検したい。

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