コラム
『週刊粧業新聞』9月29日号掲載2025.10.1(投稿日)
激変するコスメマーケット 第111回 「どこまでがオリジナルの企画力か」

『週刊粧業新聞』9月29日号に、代表取締役 鯉渕の「激変するコスメマーケット 第111回 どこまでがオリジナルの企画力か」が掲載されました!ぜひ、ご覧ください。

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「激変するコスメマーケット」
第111回 どこまでがオリジナルの企画力か

どんな組織でも“目標”や“社訓”のようなものを掲げて、求心力や一体感、方向性などを示すと思う。弊社でも創業した43年前に、大事な守るべきことを言葉にした13カ条の文書を作成した。いわば社訓のようなものである。

要約すると、厳守すべきことが「男女平等、自己表現、自主管理、甘えない、頭を使う、発言自由、不正厳罰」の7項目。逆に挑戦する項目は、「情報産業、聞く耳を持つ、企画集団、創造と想像、学ぶ姿勢、センスを磨く」の6項目である。これにはそれぞれ解説がついており、その背景にある考え方や、期待する効果も記載されている。

作成した私自身がまだ30代前半だったので、稚拙な文言ではあるが、「これらの事柄を大事に守りましょう」という申し合わせのような内容となっており、社員に守らせるつもりで考えたものだが、同時に自分を律するつもりでもあった。内容的には、今でも通用するものと思っている。ところが最近の業務の中では、通用しない現象が多い。特に、チャレンジ項目として挙げている6項目の中の“情報収集”と“企画業務”に関する項目は、今の時代に合わせて変更が必要だと考えている。

例えば、「情報産業」の項目には、「わが社は情報産業の一端を担う会社である。したがってわが社で働くスタッフは世の中の動きや情報にも敏感でなければならない」と但し書きが付いており、43年前は特にマスメディアを通じて情報を「集める」ことを推奨していた。しかし現在の情報収集は、いかに正しい情報を「選択するか」を推奨し、裏付けのチェックを不可欠としなければならない。

 

次に「聞く耳を持つ」の項目には、「情報をキャッチするためには、マスメディアに接するだけでなく、身近な情報にも敏感でなければならない。たとえば、同僚などの意見にも耳を傾けてよく聞くことが不可欠である」と但し書きした。これは今日ではどこまでがマスメディアと言えるのか難しい。SNSでは多くの身近な意見があふれている。しかしそれを鵜呑みにすることはまずない。弊社で推奨しているのは目的を共有できる同僚との意見交換。そのため社員間のブレストをよく実施している。

また、「創造と想像」の項目には、「クリエイティブ(創造力)は想像力から養われる。相手の身になって考えたり、自分をその場に置き換えて考えたり、自分の体験のないことを想像することが、ひいては創造力を育てる。したがって、思いやりの心がなければ良い仕事はできない」という但し書きを付けた。これは私が最も大切に考えている項目だ。クリエイティブは“思いやり”から生まれなければならないと考えているため、今でもしつこく社員に伝え続けている。

そして、わが社にとって必須の項目である「企画集団」。但し書きには「わが社は企画会社である。企画のプロスタッフとして、つねにクライアントにアイデア、プランを提案する姿勢がなければならない。そのためには、どんな仔細なことでも、自分で考え工夫することを身につけておかなければならない」とした。

 

43年前と大きく異なるのは、この「自分で考え工夫すること」の項目だ。最近はAIにアクセスすれば、瞬時に解決策を幾つか提示してくれる。私の若い時代には当たり前だった「生みの苦しみ」はもっと軽くなっているのかもしれない。そうなると、どこまでが「自分で考え工夫した“オリジナル企画”なのか」言い切れない場合も出てきてしまうのではないだろうか。現実には、AIをアイデアの「壁打ち相手」と考えると、とても役立つ便利なツールになっているのに。

つまり今日では、「情報収取の選択眼を鍛え、自分で考え工夫し、他者に伝わる表現をする」という一連の企画業務の内容が大きく変化している。そのため企画業務のマニュアルやルールを時代に合わせて更新しなければならないと強く感じた。

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