コラム
『週刊粧業新聞』10月27日号掲載2025.10.28(投稿日)
激変するコスメマーケット 第112回 「化粧品広告のタレント起用」

『週刊粧業新聞』10月27日号に、代表取締役 鯉渕の「激変するコスメマーケット 第112回 化粧品広告のタレント起用」が掲載されました!ぜひ、ご覧ください。

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「激変するコスメマーケット」
第112回 化粧品広告のタレント起用

弊社は通販化粧品会社の販促支援を主な業務としているため、多くの通販会社様と接点がある。

弊社のサポート業務は、既存客の定着化とロイヤル顧客の育成等、いわばお客様の「ファン化」であり、
新規獲得案件はあまり多くはない。そもそもこの支援ビジネスをスタートさせた時に、
化粧品などの消耗品は「継続使用してもらわないと事業会社の利益を出すことは難しい」と感じたからだ。

今でもその考えは変わっていない。とは言え、新規顧客獲得によって「バズって」急激に商品がヒットし、
スタートアップ企業が瞬く間に大きな会社になった事例を目にすると、正直少し羨ましく感じ、
「弊社がサポートする会社様も同じように成長して欲しいなあ~」と思うこともある。

 

新規獲得広告で急激に拡大した事例には、「タレント起用」による成功が多い。
例えば、ある人気音楽グループを起用した会社では、TVコマーシャルから、Web広告、雑誌、SNSまで
あらゆる媒体でリリースしたために、一気に知名度が上がった。
販売ルートも通販だけでなくドラッグストアやショッピングモールへと広がり、
その結果、新規獲得人数が急増。会社の規模も4~5倍くらいになって、
上場企業の仲間入りを果たし、株価も驚くほど高値が付いた。

こうなるとマスコミは取材や記事掲載で「超・成長企業」とはやし立て、
広告会社は「新たな広告提案」を持ちかけてくる。ここまでは「大成功」と言えるので、
経営者はみんな「羨ましく」思っているはずだ。

しかし起用したタレントとの契約が切れると、ブームは長く続かない。新規獲得が止まってしまうと、
既存のお客様もこれまで手を打ってこなかったリピート育成が機能せず、定着率が悪い。

ファン化はもちろんクロスセル販売も目標未達。大量に獲得したはずのお客様は、
「タレントのファンではあるが、この商品のファンではなかった」ため、2~3回目以降は大量に離脱する。

こんな事例は山ほどある。例えば、有名な美容家に推奨してもらった化粧品の例では、
新規顧客はある程度低コストで獲得できたが、そもそもお客様のターゲット層とは異なっていたため、
固定客として定着させることが出来なかった。こちらもリピート客が育成できなかった例である。

どちらのケースも、現実のロイヤル顧客と、タレント広告で獲得した新規顧客との間に大きな乖離があり、
年代や商品内容にやや無理があったためと考えられる。タレント起用の場合は、
商材とのマッチング、現ロイヤル顧客との共通点などが一致していないと難しい。
またタレントの知名度だけに頼りすぎると、契約終了時やブランドコンセプトの訴求を怠った場合、
タレントのインパクトが強すぎるだけに、商材やブランドを忘れられてしまう懸念がある。

 

一方、タレント起用がその後のブランドの成長を決定づけた例もある。
ある店頭販売の化粧品メーカーは、有名女優を長く起用し、もはやブランドの顔となっている。
聞くところによると、起用されている女優はこのブランドが大好きで、自ら会社に商品企画の提案をし、
まるで社内の人間のような立ち位置で関わっているそうだ。同様に別の大物女優も長年にわたり一社の広告塔を務め、ブランドの顔になっている。

ブランド名を聞くと必ずこの女優の顔が浮かぶほど、強い結びつきがある。
彼女のコメントやインタビューを見ると、広告として精査された言葉に整えられているとはいえ、
ブランドに対する愛情のようなものを感じる。つまりは、タレント起用の成否はこのあたりにも差があるのではないか。所詮広告ではあるが、プロの仕事の向き合い方が現れるので、ここも違うのだと思う。

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