コラム
『日本流通産業新聞』11月13日号掲載2025.11.17(投稿日)
基礎講座Q&A vol.119 「定期購入を推進しているが、うまくいかない」

『日本流通産業新聞11月13日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために
基礎講座Q&A vol.119「Q. 定期購入を推進しているが、うまくいかない」が掲載されました!

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Q. 定期購入を推進しているが、うまくいかない

お客さまのLTVを拡大するために、他社でも導入している「定期購入」施策を取り入れました。しかし従来の「都度購入」のお客さまへの対応も並走しているので、なかなかうまくいきません。(中堅通販化粧品会社)

 

A.定期購入施策の成功と失敗

 

◆どちらに重点を置くか

都度購入」を販促のメインにしておられた会社さまが、「定期購入」メインの戦略へと切り替えたことがありました。当社が販売データを分析して、お薦めしたからです。なぜ提案したかというと、「都度購入」のお客さまと「定期購入」のお客さまについてそれぞれ一人当たりの継続率及び累計LTVを算出し比較したところ、定期顧客の方が3倍程度の売上高があるという結果が得られたからです。

当時の定期購入顧客は全体の10%にも満たない比率だったので、全体集計では都度購入が圧倒的に大きな売上高を占めていました。

しかし当社では、この会社さまの将来を考えた場合、客単価の高い、定期購入のお客さまにシフトすべきだと考えて、あえて定期購入メインの仕組みを提案しました。お客さまが毎日使用する商材だったことも、そうした提案を行った理由の一つでした。
つまり「どちらのお客さまを大切にしますか?」という問題です。相談者さまの会社の商材や、お客さまの購入理由、購入頻度などを総合的に考慮し、判断すべきです。

これまでの販促スタイルを続けて「都度購入」メインで進めるか、お客さまのLTVを上げることのできる「定期購入」をお薦めするか、あるいは、コストは掛かるが、両方を並走させて、お客さまの利便性を追求するか─。まずは販売データを細かく分析して、その方向性を決めるべきです。

◆定期購入の趣旨は

事例にあげた、都度購入メインから定期購入メインに切り替えた会社さまは、その後の対応がとても大変でした。都度買いを楽しみにしているお客さまたちの期待を裏切らないように、少しずつ販促品を減らしました。一方で、常時まとめ買いや割引率をメイン訴求にしていた売り方を改めて、正常価格に戻しつつ、定期購入のお客さまが一番「お得に購入できる」仕組みに変えていったのです。

それも辛抱強く、長い時間をかけて、商品のリニューアルタイミングなどには別ブランドを立ち上げるといった手間暇をかけて切り替えていった長期作戦でした。その結果、今では定期購入比率が60%を超えて、安定した運営ができています。

定期購入で最も気を付けなければいけないことは、会社側が「お客さまが定期購入に申し込んでくれたから、これで安心」と思い込み、お客さまへの情報提供がおろそかになってしまうことです。

大切な定期購入のお客さまにこそ充実した情報をお届けすべきです。何しろLTVが高いお客さまたちなのですから。
定期購入は単なる「定期的に商品を買ってくれるお客さま」ではありません。商品と一緒に、お手入れの情報や、商品そのものについてもっと深く知るための情報などを、十分に提供する必要があります。定期購入のお客さまにお届けするべきなのは、商品だけではありません。「商品にひもづく、体験や共感の価値」がとても重要なのです。

◆本来の定期購入に戻す

さらに大切なことは、お客さま目線で「定期購入の価値」を見直すことです。

企業側の販促テクニックとしての定期購入ではなく、「定期的に届く便利なシステム、いつでも相談できて、融通も利く」「しかもちょっとお得な買い物ができる」といった、お客さまにとっての、定期購入本来のメリットをもっと訴求するべきです。

無理やり定期購入に誘導するのではなく、お客さまが仕組みを十分理解した上で、ストレスなく購入していただける「本来の定期購入の方法」に戻すことが大切です。それがお客さまに安心感と信頼感を与え、ストレスのない購買体験が実現し、継続して購入してくださるお客さまが増えるのです。

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