コラム
「日本流通産業新聞」7月28日号掲載2022.7.28(投稿日)
基礎講座Q&A vol.83 「Q.気が付いたら、お客さまが変わっていた?」

「日本流通産業新聞」 7月28日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.83 「Q.気が付いたら、お客さまが変わっていた?」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Q.気が付いたら、お客さまが変わっていた?
新規顧客の獲得がなかなか難しくなったので、当初の予定を変更して媒体経費の安い新聞広告にシフトし、初回特典は大幅な値引きで、定期顧客獲得を視野にキャンペーンを展開しました。しかし、その後は2回目以降に継続するお客さまが少なくなってしまいました。(中堅の通販化粧品会社)

A.媒体、商品、施策&特典で客層は変わる
◆想定しないお客の集団に

 通信販売の新規顧客獲得は、最初の媒体次第で客層が大きく変わることはすでにご承知の通りです。
 例えば、新聞紙面に出稿すると、現在ではほとんど60代から70代のシニア層しか集客できません。若い世代は新聞を購読していない世帯が多いので当然です。新聞でもチラシと紙面では少し客層が異なります。紙面は新聞のロイヤルティーが生まれるので、やや知的レベルの高い層で、世帯年収も同世代の中ではやや高い方に。チラシの場合はもう少し庶民的なお客さまになります。テレビのインフォマーシャルの場合は、もっとざっくばらんなお客さまが多くなりがちです。
 新規顧客獲得に向けて最初に販売する商品でも客層は変化します。
 例えばオーソドックスなオールインワンタイプの商品は、手軽さや便利さを支持している人や、あまりお手入れに時間を掛けたくないという人が多くなる傾向があります。逆に美容液やパックなどのスペシャルケアは、美容意識の高いお客さまが集まります。ファンデーションだとメークをするお客さまなので、どちらかというと外に出かける必要があったり、人に接する機会が多かったりする人になります。
 オーガニック商品や無添加化粧品は、肌トラブルを抱えた人や自然派志向の人が多くなります。
 また、特典やキャンペーンなどの施策によっても客層は大きく変化します。
 例えば、商品内容やコンセプトではなく初回の大幅割引に引かれて購入してくださったお客さまは、なかなか正価で継続してくれることはないでしょう。1個買ったらもう1個ついてくるキャンペーンも、実質半額キャンペーンなので、こちらもよほど商品が気に入らない限り、正価で買い続けてくれることはないでしょう。
 つまり、お客さまはどんなところに出店しているのか(媒体)、どんなモノ(商品)なのか、いくらで買えるのか(価格)に大きく左右されます。そこに商品の価値を高めるコンセプトや主張、商品の狙いや目的などをきちんと織り込んでおかないと、想定しないお客さまの集団になってしまう場合があります。

◆顧客調査をしてみると…

 いくつかの事例があります。
 ある女性が仕事のストレスから肌トラブルに陥ってしまい、それを克服するために苦労して化粧品を開発しました。
 そこで自分と同じように肌トラブルに悩んでいる女性たちのために、小さな通信販売会社A社を立ち上げました。最初は知人に分けているような状況でしたが、お客さまにはたいへん感謝されました。そこでもっと多くの人に喜んでもらおうとECで本格的に販売を始めようとしたところ、ECのプロから、「他社との比較で負けてしまう」との指摘を受け、初回から「まとめ買い」を訴求し、大幅割引を実施しました。
 また、最初に作ったオールインワン美容液ではなく、比較的価格も安く評価も良かった洗顔商品を入り口商品に変更しました。しかし、いつまでたってもお客さまは定着せず、LTVも低いままです。
 そんなとき、弊社がお客さま調査を実施し、ロイヤル顧客、離脱客などに話を聞いたところ、本当にお客さまになってほしい肌トラブルに悩んでいる人は離脱し、割引で洗顔商品を購入してくれているお客さまだけが残っていたのです。A社の彼女は、「私が本当に作りたかった化粧品はこんなはずではなかった」と反省することしきりでした。
 また、順調に売り上げを伸ばしてきたB社は、美容液を入り口商品にして、ECを主体に販売していました。成分も話題性のある確かなもので、時々美容誌などにも取り上げられ、美容意識の高い40代のお客さまが多く購入してくれました。
 しかし、さまざまな美容液の乱立でEC市場が過当競争に陥り効率が落ちたため、新規顧客獲得に向けた広告を新聞広告に変えましたが、いつの間にか、注文客単価は下がり、LTVも下がってしまいました。何よりもお客さまの年代が10歳近く上がってしまったのです。商品も反応の良いオールインワンに変えてしまっていたので、改めてお客さま調査を実施したら、美容意識が低いシニア層が多くなっていました。

◆社内でお客の取り合いも

一方、新聞広告をメインに新規顧客獲得を展開してきたC社は、シニア層からは圧倒的な支持を受けています。
 会社が大きくなるにしたがって、シニア層向けばかりでは将来が不安ということで、若い層を取り込むために30~40代向けの新ブランドを立ち上げました。
 最初はECを中心にしていたのですが、なかなか思うような結果が得られなかったので、もともと得意の新聞広告で集客を始めました。その結果、再びシニア層が多くなってしまい、メインブランドのお客さまも移行してしまうような勢いです。せっかく新ブランドを立ち上げても、新しい客層を獲得できず、単に社内でお客さまを取り合うような結果になってしまいました。
 このように、通販化粧品の販売は、媒体、商品、施策&価格が女性たちの気持ちやニーズにフィットするように設計しないと、想定外のお客さまが集まってしまうことがよくあります。

このページの上へ