「日本流通産業新聞」 4月3日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.113 「Q.クロスセル率を上げるために何をするべきか?」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。
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Q.クロスセル率を上げるために何をするべきか?
新規顧客数の落ち込みが大きく、既存顧客のクロスセル率アップが大きな課題となっています。当社はメーク落ちの良さが人気のクレンジングが入口商品なのですが、なかなかクロスセルがうまくいかず、困っています。(中堅通販化粧品会社)
A.お客さま目線で、クロスセルすべき価値と合理的理由を提供できるか
◆無理なクロスセルは逆効果
単品リピート通販で事業を拡大してきた企業から、「クロスセルに苦戦している」という話をよく聞きます。そもそも、単品リピート通販の新規獲得手法は、特定のニーズに対してピンポイントで一品を提案する手法であるため、他の商品を案内する機会が少ないのです。一方でお客さまは、購入した商品には興味があっても、他のアイテムは他社で購入するという消費行動が定着しています。つまりブランド全体へのロイヤルティーが育ちにくいと言えます。
貴社の「メーク落ちの良さ」に惹かれてクレンジングを購入したお客さまが、そのブランドの別アイテムに関心を持たないのは当然です。そんな状態のなかで、例えば何の関連性もない「保湿力の高いクリーム」を売り込んでも、関心を持たれないだけでなく、「押し売りされている」という印象になり、「このブランドは私のことを理解していない」と逆効果になることさえあります。
◆顧客側のメリットは何か?
クロスセルを成功させるには、初回購入の動機を正しく理解し、それに合った提案をすることが必要です。例えば、クレンジングを購入した理由が「毛穴の角栓を落としたい」だった場合、開いた毛穴を引き締める美容液をクロスセルするべきです。一方で、「ダブル洗顔不要で時短になる」という訴求に惹かれた場合は、手軽さや利便性を重視した商品を提案すると、よりニーズにマッチした「プラス1」の提案になります。
このようにクロスセルには、お客さま視点で納得できる「その商品を使うべき合理的な理由」や「一緒に使用するメリット」を伝えることが不可欠です。
クロスセル商品を使って満足していただければ、お客さまは「自分の悩みを解決する良い商品を提案してくれた」「自分のことを理解してくれている」と感じ、ブランド全体への信頼性が高まります。
クロスセル商品をお薦めする「合理的な理由」は、必ずしも肌悩みの解決に直結する必要はありません。例えば、敏感肌向けブランドなら「徹底して低刺激にこだわっている」というコンセプトを丁寧に伝えれば、肌に優しい化粧品を求めているお客さまが「ライン使いしたい」と思ってくださるでしょう。
◆クロスセルしやすい設計を
このように、クロスセル施策を成功させるには、提案に明確で合理的なロジックを持たせることが重要です。しかし商品の特性によっては、クロスセルのハードルが高いケースもあります。貴社のように洗顔料が入口商品だと、保湿ケアにクロスさせようとする場合は、商品カテゴリー間の関連性が薄いため、なかなか難しいでしょう。
新しく商品やブランドを発売する際は、あらかじめクロスセルしやすい商品設計を意識したいものです。さらに、美容理論やメソッドをしっかり構築し、複数使いのメリットを打ち出せるようにすることで、自然とクロスセルがしやすくなります。
◆ファンになってもらえれば
クロスセルを成功させるためには、どのような情報を提供して、どのように関連アイテムをお薦めするかという、タイミングやオファー内容にも工夫する必要があります。しかし、あまりにテクニックだけを追求し過ぎると、「単なる売り込みだ」と思われてしまうこともあります。
明確なコンセプトを持ち、それを適切にお客さまにお伝えしていけば、支持してくれるお客さまは必ず現れます。その方々のお声を丁寧に聞きながら、誠実にご要望に応えていくことが、遠回りのようで最も近道なのです。そうすればお客さまは強力な支援者となり、さまざまな商品を購入してくれるロイヤル顧客になってくれるでしょう。
クロスセルを単なる売り上げ向上の手段ではなく、お客さまとの長期的な関係を築くための戦略として捉えることが大切です。最終的に、お客さまに、「この商品を使ってよかった」と思っていただき、さらにブランドに愛着をもっていただくこと。それこそが、長期的な視点で見れば「クロスセルが成功し、LTVが高まる」ことなのです。