「週刊粧業新聞」 4月28日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第107回 自浄作用への修正力が成長を後押しする』が掲載されました!
本文は、下記の通り。
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『激変するコスメマーケット』
第107回 自浄作用への修正力が成長を後押しする
久々に面白い映画を見た。ヒット作品としてメディアで取り上げられているので、見た人も多いのではないか。私が行った時は、満席に近い状況だった。タイトルは「教皇選挙」(コンクラーベ)。ネタバレにならないように紹介すると、突然死した教皇様の後任を選ぶプロセスである。聖職者の世界であっても閉ざされた社会では、「こんなことも起こるんだろうなあ~」と思わせるような世俗にまみれた様々な事件が起こる。見ているうちに、「バチカンですらこんな感じだとすると、各国の政府や国際社会の現場では、もっとドロドロして正義とは言い難いことが渦巻いているはずだ」と、やや重い気持ちになってしまう。ところが終盤で大ドンデン返しがあり、「なるほど、さすがに聖職者の集団なので、最後には正義を選択する“自浄作用”が働いたのだ」とすがすがしい気持ちにさせられた。さらに最終盤には、もっと未来を見据えた展開が待っている。私としては「これぞ正義」と拍手喝采したい気分になった。しかし現実のバチカンの話ではない。映画の中のお話であり、つまり夢のお話ではある。
この映画を見て感じたことは、組織が明らかに本来進むべき道を外れて、間違った選択をしたり、堕落したりする兆候が見えた時に、“自浄作用”が機能するかという点である。様々な企業が不祥事を起こしている今、自ら修正して本来の正しい方向に戻すことができる力はとても重要だと思う。
例えば、企業の理念(パーパス)はとても理想的な言葉で語られていても、現実のビジネスではなかなかそうもいかない。「わが社は1人ひとりのお客様に寄り添う、お客様ファーストをモットーとしています」と宣言しても、すべてがお客様「ファースト」とはいかない場合もある。でもそんな経営方針ならば、少なくともお客様に対して、ごまかしや嘘をつくことは御法度のはずだ。しかし現実では「最大の目的が売り上げ拡大」と目先の目標が出てくると、ついつい逸脱した表現になってしまうこともある。そんな時に自ら「それはNGだから、止めておこう」という判断が下せるか、これが“自浄作用”の原点だと思う。
つまり常に現場感覚を保ち、お客様目線で考え、思い込みや悪しき習慣などにとらわれず「正しい方向に修正する力」のことだ。それを実践するために必要なことは、常に「現場力」を忘れないことだ。今回紹介した映画でも、選挙の投票権を持つ枢機卿たちが権力闘争する一方で、毎日無言で、食事からベッドメイキングまで身の回りのお世話をしているシスターたちが、最後に発する言葉が良かった。「私たちは何の発言権もありません。ただこの耳は聞こえて、目は見えている(そんな字幕だったと記憶している)」。つまり、きちんと正義はわかっていると言いたかったのだろう。こういう現場で末端の仕事をしている人が真実を知っているのは、どこの組織でも同じだ。通販化粧品のビジネスではお客様のお声やクレームを受け付けているカスタマーセンターの人たち、店頭で言えば販売員だ。そんな立場の方々は、日常的にお客様に接しているので、その反応や変化を肌で感じている。お客様に最も近いその人たちの感覚や意見を丁寧に吸い上げることが、少しずつ“修正していく力”になり、ひいてはそれが大きな間違いに至らない“自浄作用”になるのだと思う。そのため会社側はいつでも「声にならないような声」を丁寧に吸い上げられる、気軽なコミュニケーションができる場所にしておく必要がある。肩ひじを張らない、フラットな雰囲気で話し合える風通しの良い組織。今日では、それが一番強い組織と言えるのではないか。