コラム
「週刊粧業新聞」9月4日号掲載2023.9.4(投稿日)
第88回「日本の美容教育をどうするか」

「週刊粧業新聞」 9月4日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第88回 日本の美容教育をどうするか』が掲載されました!

本文は、下記の通り。

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『激変するコスメマーケット』
第88回 日本の美容教育をどうするか

 夏休みで遊びに来た親戚の女の子が「キッザニアに行ってきた」と楽しそうに話してくれた。既にご存知の方も多いと思うが、「キッザニア」は楽しみながら社会のしくみを学ぶことができる子ども向け施設。100種類を超える職種の仕事やサービスをかなりリアルに大人になった気分で疑似体験ができる。そんな中ふと「この子たちの美容教育はどうなっているのか」という疑問が湧いた。そもそも私たちは「いつ」「どこで」「どんな」美容教育を受けてきたのか、その変遷を辿ってみた。
 まず私のようなシニア世代は、高校を卒業する頃に2大化粧品メーカーの資生堂とカネボウの美容部員が日替わりで学校に来て、メイクのいろはを教えてくれた。これから社会にでる私たちに向けて、大人の女性としての“たしなみ”を教育し、未来の顧客を囲い込む戦略のようだった。ただしこの方法は時代とともに保護者の反対などもあって実施されなくなった。
 次に40代と30代の社員にそれぞれ話を聞いてみると、メディアの普及によってどちらの世代にも美容のお手本となるロールモデルがいたようだ。40代の彼女は、高校生のときから当時一世を風靡していた女性アーティストのメイクやファッションを特集した雑誌を参考に、自己流でトレンドを追いかけていたという。ただ見よう見まねでやってみても、どんなファンデーションを使えば良いのかがずっとわからず、20代半ばまで素肌にアイメイクやリップを施していたという話が印象的だった。
 一方、30代になったばかりの彼女は中学生からスマホを使いこなしていた世代で、既にインターネットは身近な存在だったようだ。同年代の読者モデルの美容ネタを検索したり、お小遣いで楽しめるプチプラメイクを実践したり、その頃からスマホで美容への好奇心が刺激されたようだ。ただ、美容成分や効果効能について正しい知識を教えられていなかったために、プチプラコスメで肌荒れを起こしてしまったという失敗談もあった。
 2人とも「もっと早くから美容知識を身に着けたかった」という点では一致している。そうすればファンデーションに迷うことも、肌トラブルを引き起こすこともなかったはずだと‥‥。
 このように、美容に興味を持つきっかけや情報収集の方法は世代ごとに異なるが、今のZ世代のように、SNSが普及してからは「美容」との出合いが急速に若年化しつつある一方で、正しい知識が伝わっていなかったり、知識格差が大きくなっている気がする。これまでの日本では、成人前の女性が美容に目覚めることを、なんとなく歓迎しない傾向があったように思う。ところがいま様々な情報があふれている中で、感受性豊かな年頃の少女たちが美容に興味をもつのは、ごく自然のことだ。しかし現在の教育現場では、いまだに化粧はもちろん、服装まで校則によって厳しく規制しているところが多い。一方で高校を卒業して大学生や社会人になった途端に、今度はお化粧をすることが女性のエチケットとして強制される。これでは、美容本来の目的や意図を正しく理解してもらうための「教育機会」が不足するのも当然だ。メイクのテクニックを学ぶ前に、正しいスキンケアから美容を理解する必要があると思う。
 「美意識の高いパリジェンヌは、母親によって美容を教え込まれる」と留学していた知人に聞いた。幼少期から日常の中で「美」に対する感性を磨いていくことで、少女時代から自分の個性や魅力を大切にする女性が多くなるのではないか。日本でも「少女に美容教育はしない」という固定観念を捨てて、幼少期から社会貢献が目的の美容教育はあってもよいのではないかと思う。早くから「おませな女の子」になるという意味ではなく、コンプレックスや肌トラブル、くせ毛などの髪悩みから解放してあげることで、少女たちも自己肯定感が高まるはずだ。販促目的の情報ばかり発信するのではなく、企業はもっと今の時代にあった正しい美容情報を少年少女たちに幅広く届け「美容教育で社会貢献」をしてほしいと思う。それが、美容業界の将来につながると信じている。

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