コラム
「日本流通産業新聞」12月1日号掲載2022.12.1(投稿日)
基礎講座Q&A vol.87 「Q.お客さまのイメージがバラバラでつかめない」

「日本流通産業新聞」 12月1日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.87 「Q.お客さまのイメージがバラバラでつかめない」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.お客さまのイメージがバラバラでつかめない
ターゲット層となるお客さまのイメージをまとめる(ペルソナ設定)ために、各種調査をしているが、お客さまの共通項が見いだせず、購入理由もバラバラでまとめることができない。

(中堅通販化粧品会社)

A.顧客の反応は、課題を映す「合わせ鏡」である

 

◆調査はさまざまな角度から

 お客さま像(ペルソナ)を設定することは、商品開発と同時期の初期段階に行うべきですが、事業がある程度の規模になってから、再構築している会社も多いようです。
 その場合は、今後のお客さまのコア層になると考えられる既存顧客の徹底調査からスタートすることが基本です。ところが、ご相談のように、なかなか既存のお客さま像をまとめられない会社が多いようです。
 まず調査は、定量調査のお客さまアンケートや、定性調査のグループインタビューやロイヤルユーザーへのヒアリング(ディプスインタビュー)などが考えられます。
 これらの調査をさまざまな角度から行い、購入商品や化粧品のニーズだけではなく、ライフスタイルを含めて幅広く調査することが、後々ペルソナ像を設定する場合には大いに役に立ちます。しかし、いくら情報を突き合わせても、お客さまの共通項が浮かび上がらない理由は、それまでの会社側の販売手法に原因があります。

◆販売手法を振り返る

 弊社では同じような経験を何度もしています。調査をどんなに重ねてもお客さまの共通項が見いだせず、年代も、ライフスタイルも、美容意識も、購入理由もバラバラで特徴的な傾向が出てこない、という具合です。
 その場合はこれまでの販売施策を振り返ります。弊社の経験では、ターゲット層の異なるさまざまな媒体にランダムに新規獲得広告を掲載したり、大幅値引き価格で売っていたり。加えて商品コンセプトを訴えることもせず、商品の価値をないがしろにした販売施策を繰り返していると、お客さまは単なる「バーゲン狙いの集団」になってしまいます。
 さらにまずいことに、お客さまは商品の価値を感じていないために、「化粧品だったら何でもよい」というような美容意識の低いお客さまの集団になってしまうので、客単価が伸びることはありません。LTVの低いお客さまの大集団になってしまうので、極端に効率の悪いビジネスになってしまいます。
 ブランドに対する帰属意識は全く醸成されないので、調査に協力を依頼しても反応は薄く、高額のギャラでも支払わない限り応じてもらえません。それでもドタキャンが出るほどです。つまりお客さまにとって、その化粧品は「どうでもいい商品」になり下がっているのです。
 こういうブランドは、割引を止めるとお客さまが大量離脱することになります。新規獲得も初回の大幅割引を目当てに来るお客さまが多く、2回目への転換は見込めません。

◆お客さまがバラバラの理由

 お客さまがバラバラの理由は、それまでの会社の販売施策が一定の方針のもとに実施されたものではなく、反応の数値だけを追いかける、その場限りの施策だったからです。
 例えば、媒体は初回の反応の良いものを選び、大幅値引きもレスポンス率のみを基準にしている。またコミュニケーションは激安価格のみを訴えている─など。肝心の商品の紹介はおざなりで、開発者の熱い思いや、何のための商品か、どのように使ってほしいか、使ったらどんなよいことがあるのかなどが発信されてないため、お客さまにそのよさが伝わっていないのです。それではお客さま像の共通項は見いだせません。

◆課題が浮かびあがる

 そもそもビジネスとして収益を上げる前に、「誰のために、何のために、なぜこの化粧品を売るのか」という小売業としての基本の方針が打ち出せていないのです。
 このようにお客さま調査を徹底して丹念にお客さまの声を聞いていくと、問題点は事業会社側にあることが分かります。弊社ではこれを「お客さまの姿や声は、会社の姿を映し出す『合わせ鏡』」と考えています。
 お客さまは正直に反応しますので、会社側が行ってきたコミュニケーションや施策に素直に反映します。そして自分の生活の中にうまく取り入れているだけなのです。
 お客さま像を設定するのならば、まず自分たちが「何のために仕事をするのか」ということから問い直した方がよいと思います。

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