「週刊粧業新聞」 11月14日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第79回 誰のための化粧品か? ペルソナ設定を』が掲載されました!
本文は、下記の通り。
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『激変するコスメマーケット』
第79回 誰のための化粧品か? ペルソナ設定を
化粧品を開発する時に最初に考えるのは、「どんな人の、どんな要望に応える化粧品なのか」ということだと思う。次に要望の中身を詳しく掘り下げて、ターゲット層のお悩みや困りごと等、解決したいことを事細かく考えて、開発したい製品の原料や処方や使い方等を設計して、製品化を進めるのが通常の化粧品のモノづくり工程だと思う。
ここで一番大事なのは、「どんな人に」というお客様像をはっきりさせることだ。各社ともお客様像は明確に「ペルソナ像」として定めていることが多い。私も得意先様のサポート業務をスタートする時は、「どんなお客様なのか」ということを最初に確認する。
あるドクターズ系のオールインワン化粧品の販売促進をお手伝いした時に、得意先の担当者から、「〇〇県(首都近郊)在住、未就学児童のお子様が2人、ご本人はパートで働いており、通園の送り迎えを軽自動車ですることが日課」という明確な設定を社内で共有していると聞いた。ここまで明確だと、企画や販促を考える時はとてもありがたい。
他の商材でも同様かもしれないが、化粧品の開発は雑誌を創刊する作業と似ている。どんな人が、どんな気分で、どんな時に読むのかを考え、どんな内容なら嬉しいかを考える。そのためにどんな生活をして、何を喜び、何を嘆いて、何にときめいて、何が楽しみなのかを想像すると、次第に人物像がイメージできてくる。そしてこの部分は友達の〇〇さんの様に、この部分は近所の〇〇さんの様に、この部分は親戚の〇〇さんの様にと、だんだんイメージにリアリティーが出てくる。私の場合はこんな方法で「ペルソナ設定」をしているが、できればペルソナ設定は関わる関係者が全員共有して、お客様イメージを統一しておいた方がよい。皆で考え設定したペルソナ像を元に、全員がイメージの中で、「〇〇さん」を作れば、アイデア会議もスムーズだし、企画内容も焦点が絞られてすぐに方向性が定まるはずだ。
私は化粧品各社の「ペルソナ研究」について、もっともっと強化して欲しいと思っている。商品や販売促進にすぐに結び付く知見だけでなく、もっと広い意味でのライフスタイルの研究や、これからの女性たちの暮らしや生き方を研究していく必要があると思う。ある大手の化粧品メーカーさんが1990年に2000年代の女性像を10年単位で予測するプロジェクトをスタートさせ、私もメンバーに入れてもらった。様々な予測レポートを提出したが、女性たちの将来への夢も盛り込んだレポートだったような記憶がある。しかし今、それらのレポート通りにはなっていない。
様々な機器類のお陰で、生活の便利さは想像以上になった、ITの定着で、情報伝達の手段も想像を超えている。コロナ禍で少し止まってしまったが、世界はとても身近になった。では、当時と比べて女性たちが楽しく、元気で、夢が膨らんで、幸せになっているかというと、大きな変化はない気がする。夢のレポートの中では女性たちがもっと、生き生きと活躍する社会になっていたはずだった。
必ずしも夢はかなわないこともあるけれど、化粧品会社は「ペルソナ設定」の作業の幅をもう少し広げて、長期視点に立った女性たちの未来予測や夢の実現といった提案をして欲しい。またそんな社会の実現に貢献するような活動をしてもらえると、ブランドの好感度は高まると思う。