コラム
「日本流通産業新聞」8月20日号掲載2020.8.20(投稿日)
基礎講座Q&A vol.65 「Q.通販の需要はあるはずなのに、売り上げが伸びません。」

「日本流通産業新聞」 8月20日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.65 「Q.通販の需要はあるはずなのに、売り上げが伸びません。」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.通販の需要はあるはずなのに、売り上げが伸びません。

コロナ禍で通販全体の売り上げは伸びているはずですが、弊社の化粧品の売り上げは低迷しています。コロナ自粛はまだまだ続くと思います。今こそ、売り上げを伸ばすチャンスとして販促につなげたいのですが、どのようにすればいいのでしょうか。(中堅の通販化粧品会社)

A.「お客満足」を第一にしたブランド作りを

◆店販メーカーの通販化も

 今回のコロナ危機で、巣ごもり消費が見られ、通販全体の利用者は確実に増えています。食品や在宅ワーク用の機器、学習教材などは需要の大変動が起きています。
 一方、化粧品の需要はというと、大手化粧品メーカーが在宅勤務中の女性を対象にスキンケアの意識調査を行ったところ、約9割以上の人が「忙しい中でも効果的なお手入れ方法があれば取り入れたい」と回答しているそうです。
 口紅などのメークアイテムの需要は減少しているものの、美容意識はある程度キープされているようです。
 このように美容意識は変わらない一方で、通販化粧品が伸び悩んでいるのはなぜか。それは、店頭販売が営業自粛期間中に化粧品の売り方やサービスの在り方を変化させてきたためだと考えられます。
 従来の店舗販売メーカーが、通販メーカーの得意分野であるはずのアウトコールや動画配信サービスを導入し、いわば通販に参入してきているのです。
 しかも、対面で一度接客したお客さまが、面識のある販売員から通販的な手法で購入すると、一対一の親密な関係性がより深まります。通販専業メーカーから購入するよりも、「こんな時期に、親切にも連絡をくれた」と歓迎されるのです。通販メーカーが届けるのは当たり前ですが、店頭販売メーカーが自宅まで届けてくれるのは”サプライズ”であり、感謝される要因になるのでしょう。

◆店と通販の境界線なくなる

 実は最近、店頭販売もしている通販メーカーで分析したところ、一度店頭で接客を受けたお客さまが、その後、通販で購入するようになると、もともと通販メディアから購入してくれたお客さまより、リピート購入の継続率が高くなることが分かりました。
 お客さまは店頭でいろいろな商品を比較して、販売員の説明を十分に聞いてから購入したものについては、信頼し、納得して購入し続けてくれるのだと思います。そして、その後通販で購入している理由は、おそらく「便利だから」「定期的に届けてもらえるから」などの理由があるはずです。
 つまり、お客さまは自分の買い物事情に合わせて、店頭販売をショールームのように”体験の場”として、通販は”便利な買い物の場”と位置付けているのではないでしょうか。
 そうなるともはや、化粧品販売において、店舗と通販の境界線はなくなりつつあり、その特徴を生かして役割分担を考える時期に来ているのではないでしょうか。

◆絆を深めるビジネスへ

 そして、いま問われるのは、従来型の通販の手法が今後も通用するのか、ということです。通販の一般的な方法は、テスト販売を繰り返した効率の良い広告を、マス媒体やウェブ広告に大量投入して新規のお客さまを集める、いわば「投げ網方式」の販売手法がまだまだ主流です。
 その結果、年間平均で客単価が3万円未満というような関係性の薄いお客さまを大量に抱えるビジネスモデルとなってしまいます。そのため、常に顧客数を増やさないと売り上げを拡大することはできません。
 しかし、お客さまの人数が多くなればなるほど、コミュニケーションは手薄になります。
 そして、多くの離脱客を生み出し、また新たな顧客の獲得に着手する─というように常に自転車操業的なビジネスになってしまうのです。
 お客さまの方も通販メーカーから購入した商品は、十分な理解も愛着も醸成されないので、次々に新しい商品に手を出すようになります。
 通販は「新規を増やすビジネスモデル」から「絆を深めるビジネスモデル」にシフトしていかないと、今や通販の販売手法も手に入れた店舗販売メーカーに、太刀打ちできなくなるのではないでしょうか。

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