コラム
「日本流通産業新聞」11月4日号掲載2021.11.4(投稿日)
基礎講座Q&A vol.76 「Q.主力商品のリニューアルを検討も、反発も心配です。」

「日本流通産業新聞」 11月4日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.76 「Q.主力商品のリニューアルを検討も、反発も心配です。」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.主力商品のリニューアルを検討も、反発も心配です。
 弊社の主力スキンケアラインの売り上げが落ちてきているため、そろそろリニューアルした方がいいのではと考えていますが、昔からの愛用者さまが多いので、”反発”の心配もあります。リニューアルを成功させる秘訣を教えてください。(中堅の通販化粧品会社)

A.時代やニーズに合わせた刷新は必要。ただし「Why」を忘れずに

◆リニューアルの真の目的は?

 多くの通販化粧品会社では、3~5年程度の頻度で何らかの小さなリニューアルをしているようです。理由はさまざまですが、多くはお客さまからの”要望の声”がもとになっていることが多いようです。
 例えば、「容器が開けにくい」「テクスチャーがベタベタする」「すぐに効果を実感できない」などの声に対応してリニューアルする場合は、その理由を丁寧に説明することで、リニューアルを好意的に受け止めてもらえるようです。
 しかし、「新成分を配合して新客獲得の広告を強く打ち出したい」「容器コストを抑えたい」など会社側の事情でリニューアルに踏み切る場合、会社の都合だけではなく、既存のお客さまのメリットを考えなくてはなりません。時代のニーズに合わせたリニューアルは必要ですが、目的をしっかりと見極めた上で進めたいものです。
 つまり、何のためにリニューアルするのかという「Why(なぜ)」が最も大事だと思います。リニューアルの最大の目的は、「お客さまの便益」を強化することのはずです。リニューアルによって、お客さまがどんな満足、効果、利便性を得られるかが一番重要です。
 話題性を取るためとか、イメージを上げるためとか、コスト削減とか、それも大事な理由には違いありません。しかし一番目の理由ではありません。やはりリニューアルは、お客さまの「キレイを実現するため」を中心に据えて行うべきです。

◆丁寧な対話はできているのか

 多くの会社のリニューアル広告を見ていると、時々”リニューアルがお客さまに与える影響”をやや軽視しているのではないか思うことがあります。特にスキンケア商品は、その商品を愛用している既存顧客が多ければ多いほど、リニューアルによってファンの心が離れるリスクも大きくなります。お客さまは、使い慣れた愛用品のテクスチャーが少し変わっただけでも、「私の化粧品ではなくなってしまった」と感じるようです。
 通販化粧品会社のお客さまに話をうかがうと、「本当は前の商品の方が好きだった。なぜ変えてしまったのか。前の商品を復活してほしい」という声を耳にすることがあります。これはリニューアル時のコミュニケーションが十分でなかったということでしょう。

◆開発のプロセスも開示する

 通販化粧品はお客さまと定期的にコミュニケーションを取る手段を持っているのが大きな利点です。会報誌やメルマガなどの定期刊行物で「なぜリニューアルするのか」時間をかけて丁寧に伝えることもできるはずです。
 例えば、徐々に情報を開示する告知方法。人気商品としてファンの声を紹介→あえて要望や意見も公開→さらに良い物にするためにリニューアル決定→予告発表→リニューアル詳細発表、というようにお客さまの声からスタートし、段階を踏んだ告知なら、愛用品が変わってしまうという不安も払しょくし、改良への期待感を高めることもできるでしょう。
 また、開発段階で愛用者さまに試用モニターを依頼するなど、リニューアル施策にお客さまを巻き込むことも、成功の秘訣です。お客さまは自分の意見が取り入れられることで、「自分たちも改良に参加している」という参加意識が高まります。

◆定期顧客はより丁寧な告知を

 定期購入利用者が多い商品の場合は、さらに慎重を期す必要があります。都度買いのお客さまに比べLTVが高く、ファン意識も高い定期顧客は、最も大切にするべき存在だからです。定期便で自動的に送られてくる愛用商品が、いつの間にか変わっていたなどという事態は、お客さまのショックも大きく、離脱の原因になってしまうこともあります。
 定期顧客に対しては、都度買いの一般会員に先駆けてDMを送り、先行してサンプルを送付するなど、誠実で丁寧なコミュニケーションをするべきです。それによってお客さま自身も「自分は大切にされているお客さまなのだ」という意識が生まれ、さらにブランドへの愛着が高まることでしょう。
 リニューアルは、自社の商品がお客さまの求めるものとずれていないか、を問い直す良い機会です。成分や処方をハイスペックに改良することも大切ですが、それだけはお客さまに受け入れられるリニューアルにはなりません。
 「なぜリニューアルするのか」を十分に検討し、お客さまのインサイトを研究したりするなど、じっくり取り組むことで、成功するリニューアルになるはずです。

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