コラム
「週刊粧業新聞」1月22日号掲載2024.1.22(投稿日)
第91回「商品開発の潮流はどう変化するか?」

「週刊粧業新聞」 1月22日号に、代表取締役 鯉渕の『激変するコスメマーケット 第91回 商品開発の潮流はどう変化するか?』が掲載されました!

本文は、下記の通り。

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『激変するコスメマーケット』
第91回 商品開発の潮流はどう変化するか?

 これまでお客様へのインタビューの時は、必ず「化粧品を選ぶ時に重視すること」をヒアリングしてきた。自分の肌に合うか、肌悩みを解決してくれそうな商品か、クチコミの評価が高いか、価格が手ごろか、などの回答が上位に並ぶ。
 しかし最近「メーカーのこだわりやコンセプトに賛同できるか」という回答が少し増えている気がする。詳しく聞いてみると、「無添加」や「品質」へのこだわりなどが挙がる。またSDGs関連への取り組み、環境への配慮、社会貢献への姿勢、インスタグラムの公式アカウントから社長のブログまで、様々な企業活動についても見られていることがよくわかる。
 まずは商品が信頼でき、支持できるものかどうかは大前提だが、同時に企業として支持できるかどうかも問われている気がする。最近よく耳にする「パーパスビジネス(理念のある事業)」が、一般の消費者にも広く浸透し、商品を使用することで自分が「推す企業」としてふさわしいかどうかも見られている印象だ。
 そんな時代背景の中で、これからの化粧品開発のあるべき方法を考えると、過去の手法から少し軌道修正が必要なのではないかと思う。これまで化粧品の商品開発は長い時間をかけて美容成分を研究し、その効果が検証されて、やっと世の中に出てきた。特に新成分を開発し配合する場合は、長い時間が必要だ。そのためメーカーからの提案発信が中心になり、「プロダクトアウトの発想」に頼ることになっていた。
 しかしお客様に「推す企業」として相応しいかどうかが問われている現在では、開発の前段階からお客様の声を丹念に聞き、声にならない無言のニーズを徹底的に取り入れる必要がある。加えて企業姿勢も問われているとなると、商品開発は単なるモノづくりではなく、企業活動そのものを表現する商品にならなければいけない。企業として明確な主張も反映されたものでなければ他社との差別化もままならず、ブランドの存在価値まで危うくなりかねない。メーカーの独りよがりの考えや、耳障りの良い言葉だけのコンセプトではなく、お客様の声やニーズを先取りし、企業のコンセプト表現も商品開発で模索する。それが「マーケットイン」の商品開発だ。
 つまりこれからの商品開発は、お客様の声や潜在ニーズを的確にとらえて、自社の企業理念(企業の存在理由やお客様に対する約束など)に軸足を据え、その両方に合致した商品を、他社に先駆けて世の中にリリースしなければ勝機はない。そう考えると、商品開発にかける時間の使い方、開発のロジックや手順に至るまでこれまでとは大きく変化するはずだ。
 イメージで表現すれば、歯車を逆回転させ、なおかつ超高速で回すような印象だ。しかもハイクオリティーが求められる。そんなモノづくりが果たして可能かどうか? たぶん「やるしかない!」時代なのだと思う。

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