コラム
「日本流通産業新聞」2月8日号掲載2024.2.19(投稿日)
基礎講座Q&A vol.100 「Q.お客がなかなか使い方を覚えてくれません」

「日本流通産業新聞」 2月8日号に、代表取締役 鯉渕の『強い通販化粧品会社になるために 基礎講座Q&A vol.100 「Q.お客がなかなか使い方を覚えてくれません」』が掲載されました! 本文は、下記の通り。

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Q.お客がなかなか使い方を覚えてくれません
 コロナ禍が一段落したので、久しぶりにお客さまをお招きして「お手入れレッスン会」を開催したのですが、そこでびっくりすることがありました。ロイヤル層のお客さまが商品の使い方と手順を間違えていたのです。使用量も適切ではありませんでした。長く購入してくださっているお客さまなので、これまでに会報誌やDMも送付しており、「よくご存じのはず」と思っていたのですが。(中堅通販化粧品会社)

A.これまでの「10倍伝えるつもりで」伝えたい

◆伝わらないものだと知るべき

 まず「お客さまには使い方などの情報は伝わらないものだ」ということを知るべきだと思います。弊社では、ひんぱんにお客さまインタビュー(グループインタビュー、デプスインタビューなど)を実施していますが、ロイヤル顧客のグループでも必ず使い方を間違っている方がいらっしゃいます。ある通販会社のケースでは、お客さまの80%が商品の出し方を間違っていました。20年間もご愛用いただいている方々だったにも関わらず……。
 スキンケアでよく間違えられるのは使用順。一般的な3ステップ「ローション、乳液、クリーム」とは異なるアイテムを組み込んでオリジナルの美容メソッドを提唱しているブランドで、特に間違いが多いようです。次に間違いが多いのが使用量。そもそもメーカーは使用量の目安として、500円玉大とか、パール1粒など、剤形や個々のイメージによって量が異なる表記を使っています。これは手に取った時に分かりやすい表現ではありません。プッシュ式の容器でも、プッシュの回数、おしこむ力の強弱よって出る量は異なります。
 このようにこちらが十分にお伝えしているつもりでも、なかなかお客さまには伝わらないものです。ましてシニア層ならば、若いころに身についたお手入れが習慣になって、変えられないことも多いようです。

◆使い方が購買意欲を左右

 なぜ使い方が重要かというと、化粧品は存在しているだけでは価値のないもので、お客さまに使っていただき、その効果や心地よさを実感していただいて初めて価値を発揮するものだからです。私はこれを「化粧品=半完成品」と呼んでいます。また処方した人が考えた正しい使い方をしてもらわないと正しい効果も実感できません。
 私でさえも「コットンでお使いください」と記載されているサンプルはいつも面倒で敬遠しがちだったのですが、あるメーカーで専用のコットンも一緒にいただいたので、試してみたところ、使用感がとてもよく、効果にも満足できたので、今では時々購入しています。このように化粧品の使い方は、お客さまの購入欲を大きく左右します。

◆通販は「伝える」が基本

 こちらが十分に伝えたつもりでも、伝わっていないのがコミュニケーションだとつくづく反省させられます。そこで通販化粧品会社の伝え方が十分なのだろうかと、改めて考えてみました。
 例えば使用量については前述したように、再現できない例や、人によって異なる量をイメージする例を示すなどは、とてもお客さまに親切だとは思えません。まして使用順やお手入れ方法が他社と異なるなら、表現にもっとこだわるべきだと思います。
 例えばカタログの表記の仕方をもっと大胆に工夫すべきでしょうし、ウェブと連動して簡単に動画で確認できる方法もあるでしょう。通販だからといって対面することが禁止されている訳ではないので、リアルイベントなどでお手入れ会をしてもよいでしょう。方法はいくらでもあるはずです。
 通信販売は「伝える」ことが基本のビジネスです。ジャパネットたかたの創業者・高田明氏の著書にもあります。「伝えることから始めよう」と。
 もう一人、著名人の伝え方の例をご紹介します。料理研究家の土井善晴氏が1月20日の日経新聞夕刊「あすへの話題」で「冬菜味わう」というタイトルで、ほうれん草のゆで方を解説していました。これが名文です。
 料理を全くしない私でさえ、こんな風にていねいにほうれん草をゆでて食したいと思うほど。文章の最後には「心の置き方で料理は禅にだってなると思う。」と記載されていました。
 方法や手順を知り尽くした人が、禅僧になったような気持ちで、自分の両手で料理を作り上げることがよく伝わる文章でした。
 興味のある人は朝日新聞のアーカイブスにアクセスしてみてください。化粧品もこのような伝え方ができたら、その価値も上がるような気がします。

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